自分自身の好みに合うLinuxを作ることは,決して難しくない。フリーソフトを手順よく組み合わせていくことで,ごく普通のユーザーであっても自分だけのLinuxを作成できる。本講座を読みながら,Linuxの仕組みを理解して『自分Linux』を完成させよう。

 前回までに,自分LinuxをWebサーバーとして稼働させた。今回からは,Webサーバーに次いで人気の高い「ファイル・サーバー」を自分Linux上で稼働させる(図1)。

図1●自分Linux作成作業の流れ
図1●自分Linux作成作業の流れ
今回は自分Linuxをファイル・サーバーに仕立てる。

 自分Linuxをファイル・サーバーとして仕立てる場合,ファイル共有用の大容量ハード・ディスク装置(HDD)が必要になる。今まで,自分LinuxはHDDを搭載せずにフラッシュ・メモリーのみで稼働させてきたが,今回はUSB接続のHDDを用意し,そのHDDをファイル共有用のディスクとして用いることにする。

定番のファイル・サーバー・ソフト「Samba」を導入する

 「Linuxでファイル・サーバーを立てる」と聞いたら,だれもが「Samba」を思い浮かべるだろう。もちろん,自分LinuxでもSambaを用いる。2006年1月初旬時点の最新版は,バージョン3.0.21aであり,このバージョン3.0系列では表1に示した機能を備える。自分Linuxでも,このバージョン3.0.21aを導入する。

表1●Samba3.0で加わった主な機能
表1●Samba3.0で加わった主な機能

ソースからSambaを導入する

 早速,Sambaを導入していこう。Sambaのバージョン2.xまでは,日本語を正しく扱うには日本語対応版のSambaを入手して導入する必要があった。しかし,表1にも示した通り,Sambaのバージョン3.0以降では,日本語を含む多くの言語がサポートされている。そのため,バージョン3.0以降なら,公式サイトやミラー・サイトから入手できるSambaのソース・アーカイブをそのまま利用できる。

 これらのサイトからSambaのソース・アーカイブを入手したら,/usr/local/src/origsoftディレクトリにコピーしよう。コピーしたら,図2のように展開する*1

図2●Sambaのソース・アーカイブを展開
図2●Sambaのソース・アーカイブを展開
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 展開後にSambaのインストールを開始するが,その前にSambaの導入に必要な環境を整えておこう。最初に,自分Linuxの開発環境に,メッセージを多言語化するソフト「gettext」を導入する。それには,まずVine Linuxの公式サイトに書かれたミラー・サイトなどのVinePlus/3.1/i386/RPMS.plusディレクトリ内にある,gettextのパッケージ(gettext-0.14.1-0vl2.i386.rpm)を入手する。

 いつものように,入手したファイルを/usr/local/src/origsoftディレクトリに保存する。保存したら,gettextのパッケージをrpmコマンドで図3のようにインストールしよう。

図3●自分Linuxの開発環境にメッセージを多言語化するソフト「gettext」を導入
図3●自分Linuxの開発環境にメッセージを多言語化するソフト「gettext」を導入
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 さらに,Sambaの起動に必要なコマンド解析用ライブラリ「libpopt」を導入する。このlibpoptは,「popt」というソフトに含まれている。poptのソース・アーカイブの入手先は「ftp://ftp.rpm.org/pub/rpm/dist/rpm-4.1.x/」であり,そこから「popt-1.7.tar.gz」というファイルをダウンロードする。

 ダウンロードしたソース・アーカイブを/usr/local/src/origsoftディレクトリに保存し,図4のようにコンパイルして自分Linux構築作業用ディレクトリ(/usr/local/src/origdev)に導入する。

図4●コマンド解析用ライブラリ「libpopt」を導入
図4●コマンド解析用ライブラリ「libpopt」を導
libpoptは,「popt」というソフトウエアに含まれているので,poptをコンパイルして導入する。
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 ここまでの準備が整ったら,いよいよ本題のSambaを導入する。Sambaの導入先は,自分Linuxをフラッシュ・メモリーから起動した際に/opt/Sambaディレクトリ以下になるように設定した。

 Sambaのコンパイルおよび導入手順は図5の通り。コンパイル前に,Sambaに関連するファイルを格納する/usr/local/src/origdev/opt/Sambaディレクトリを作成する。さらに,正しくインストールされるように,作成したディレクトリに対して,「/opt/Samba」というシンボリック・リンクを作成しておく。

図5●Sambaのコンパイルおよび導入
図5●Sambaのコンパイルおよび導入
Sambaに関連するファイルは,/usr/local/src/origdev/opt/Sambaディレクトリ内に格納する。
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 ここでは,configureコマンドで指定したオプションの説明は省略するが,知りたい場合にはSambaのドキュメントやオンライン・ヘルプ等を参照してほしい。以上で,Sambaが導入される。