(イラスト・アニメーション:岸本ムサシ)
今回の回答者: 島上 純一 インターネットイニシアティブ ネットワークサービス本部 サービスオペレーション部部長 |
各プロバイダでユーザーが利用する帯域を制限しようという動きが出てきたのは,2003年の終わりごろでした。一部のユーザーが大量のデータを転送するなどして帯域を占有したため,ほかのユーザーの通信に支障が出るケースが増え,クレームが多く寄せられたのがきっかけです。ユーザー間の不平等を是正するためには,トラフィックの制限もやむを得ないということになりました。
問題になったのは,上りの通信量です。従来は下りの通信量が多かったのですが,そのころから上りの通信量が増えました。その原因の一つとして,P2Pファイル共有ソフトの影響が指摘されました。
ただ,P2Pファイル共有ソフトの影響に対する考え方や制限方法はプロバイダによって違います。
例えば,一部のプロバイダはP2Pファイル共有ソフトだけを制限の対象にしています。最近は,通信のパターンからファイル共有ソフトのトラフィックを識別し,利用できる帯域を制限したり,パケットの優先度を下げたりする装置がありますから,そのような装置を利用しているのだろうと思われます。
当社の場合は,ユーザーがファイル共有ソフトを使っているかどうかに関係なく,上りのトラフィックを1日当たり15Gバイト以上発生させているユーザーを制限の対象にしています。ただ,ネットワーク側で帯域を絞ることはしていません。トラフィック量を抑えてくれるようにユーザーに通知して,協力を得られない場合は退会をお願いしています。
このように,帯域制限に対するプロバイダの考え方はいろいろです。Winnyによる情報流出が相次いだため,最近はセキュリティの向上を目的に,ファイル共有ソフトによる通信を停止しようというプロバイダも出てきているようです。