日経コンピュータ2006年4月3日号の記事をそのまま掲載しています。執筆時の情報に基づいており現在は状況が若干変わっていますが、BCP策定を考える企業にとって有益な情報であることは変わりません。最新状況は本サイトで更新していく予定です。

 NTTファシリティーズと日本HPは、複数のハードウエアを組み合わせた「DC POWERソリューション」を共同で、データセンターを持つ一般企業やデータセンター事業者向けに提案している。このソリューションは、直流対応のUPS と、直流で動くブレード・サーバーを使って、直流交流変換の回数を減らし、電力消費の無駄を抑えるものだ。

 NTTファシリティーズがUPSを、日本HPがブレード・サーバーをそれぞれ販売する。直流対応UPSが、センターが交流で取り込んだ電流を直流に変えて、UPS内部の電池に蓄え、直流のままで日本HPの直流対応サーバーに送る。

 通常は、UPSからサーバーに交流で供給するため、UPS内部の電池の直流電流を交流に変換、さらにサーバー内部で交流を直流に変換する。つまり、合計2回多く変換が必要だった。

 「変換回数を減らすことで、平均して消費電力を20%ほど削減できる。ブレード・サーバーが42枚収まった三つのラックと小型UPSを運用する場合、試算では年間の電力料金を250万円ほど減らせる」(NTTファシリティーズの手島周正マネージャ)。

ネットワーク機器の電力も問題に

 サーバーやストレージ、電源装置の電力をおさえる試みは続けられているものの、ここへきて別の電力問題が急浮上している。「ネットワーク機器が深刻な電力不足をもたらす」と大手ISP(インターネット接続事業者)のIIJで戦略企画部長を務める三膳孝通取締役は予想する。

 近年、ISPが処理するデータ量は増加の一途をたどっており、ルーターやスイッチの消費電力は増え続けている。このまま増加すれば、2010年にルーターやスイッチが消費する電力量は、2000年の2倍以上になる、という試算がある(図6)。とりわけ今年は「Webコンテンツの普及と動画配信サービスが追い風となり、さらなる通信量の増加が見込まれる」(三膳部長)。

図6●情報通信機器の電力消費予測値
図6●情報通信機器の電力消費予測値 [画像のクリックで拡大表示]

 最近は光ファイバ対応の高速ルーターやスイッチが使われることが多い。光ファイバによるデータ送信は、メタル線よりも消費電力が大きい。ISP間をつなげるIX(インターネット・エクスチェンジ)などに導入するハイエンド・ルーターは、20kW以上の電力を使う。「これはブレード・サーバー並みかそれ以上だ」(三膳部長)。

データセンターの悩みは続く

 日本IBMの榊幹雄I/Tスペシャリストは、「このままシステム全体の消費電力が上がり続ければ、最新のハードウエアはすべて水冷にシフトしなければならないだろう」と警告する。

 一方、NTTファシリティーズの手島マネージャは、「水冷システムへのシフトは難しいのではないか」と指摘する。「日本は欧米と違って設置スペースが少なく、上層階にサーバーを置かなければならない。上層まで水を引く手間や配水管の損傷などを考えると、費用面でも安全面でも苦しい」(手島マネージャ)。

 ネットワーク機器の省電力に向けた対策は始まったばかり。データセンターの消費電力に対する悩みは続きそうである。

今そこにあるITの電力問題(1) 
今そこにあるITの電力問題(2) 
今そこにあるITの電力問題(3)