日経コンピュータ2006年4月3日号の記事をそのまま掲載しています。執筆時の情報に基づいており現在は状況が若干変わっていますが、BCP策定を考える企業にとって有益な情報であることは変わりません。最新状況は本サイトで更新していく予定です。

 電力増に応じて電力設備を増設することが難しいとなると、省電力に取り組むしかない。省電力に向けた取り組みが目立つのは、サーバーのプロセサ分野である。

動作周波数重視から脱却

 プロセサ・メーカー各社は、動作周波数を上げて性能を向上させるだけではなく、いかに消費電力を抑えるか配慮するようになってきた。

 米インテルは2006年第3四半期に消費電力を抑えたサーバー向け省電力プロセサを投入する計画である。「Woodcrest(ウッドクレスト)(開発コード名)」と呼ばれるサーバー向けの新プロセサは、「デュアルコア構成にしたとき、消費電力を80Wに抑えているにもかかわらず、現在のデュアルコア Xeon(2.8GHz)に比べて処理性能は80%向上する」とインテルの平野浩介デジタル・エンタープライズ・グループ統括部長は説明する。ちなみに現行のXeonの消費電力は135W程度である。

 これまでインテルはプロセサの動作周波数を上げることによって処理性能を伸ばしてきた。このため同社のプロセサの消費電力は増加し続けていたが、 Woodcrestによって一転して消費電力を抑えたことになる(図2)。2006年3月7日に米国で開いたイベントIDF(Intel Developer Forum)においてインテルは、Woodcrestをはじめ次世代プロセサが採用する「Coreアーキテクチャ」の詳細を発表した。

図2●Xeon DPの消費電力の推移
図2●Xeonの消費電力の推移
プロセサコアの変更など主なバージョンアップごとに比較した

 Coreアーキテクチャは、プロセサの省電力化を図るために、「Intel Wide Dynamic Execution」と呼ぶ実行ユニット、「Intel Intelligent Power Capability」と呼ぶ電力制御機構を備える。

 Intel Wide Dynamic Executionは、1クロック当たりの命令実行数を増やす。動作周波数を抑えつつ処理能力を高める仕組みだ。Intel Intelligent Power Capabilityは、プロセサを構成する回路の中で動かす必要がない部分の電源を切ることにより低消費電力を実現する。これらは、ノート・パソコン用プロセサ「Pentium M」で採用されていた技術を改良したものだ。今後は、省電力のアーキテクチャをサーバーやデスクトップ用のプロセサにも使う。

 一方、米AMDや米サン・マイクロシステムズは、インテルに先駆けて省電力のプロセサを投入してきた。各社は引き続き、消費電力を抑えつつ処理性能の向上に取り組んでいる。AMDはIDFの前日に、消費電力は現行プロセサと同じ95Wのままで、動作周波数を従来の2.4GHzから2.6GHzに引き上げた新プロセサを発表した。プロセサとメモリーを結ぶ伝送路を高速にしながら消費電力が小さくなるよう改良した。

 サン・マイクロシステムズは2005年12月に八つのプロセサコアを搭載する新型プロセサ「UltraSPARC T1(開発コード名:Niagara(ナイアガラ))」を出荷した。消費電力は最大73W。コア一つひとつの動作周波数を1GHzに下げて消費電力を抑えている。

 しかし、動作周波数を下げているので、データベース処理のような常にプロセサをフル稼働させる用途には向かない。周波数が上げられないことによる苦肉の策でもある。

今そこにあるITの電力問題(1) 
今そこにあるITの電力問題(3) 
今そこにあるITの電力問題(4)