日経コンピュータ2006年4月3日号の記事をそのまま掲載しています。執筆時の情報に基づいており現在は状況が若干変わっていますが、BCP策定を考える企業にとって有益な情報であることは変わりません。最新状況は本サイトで更新していく予定です。

 プロセサ自体の省電力化と並行して、プロセサの負荷に応じて電力消費を制御する技術が登場している。

プロセサを制御して省電力化

 米ヒューレット・パッカード(HP)が開発した「HP Power Regulator」がそれである(図3)。Power Regulatorは、HPのサーバーProLiantシリーズに搭載されている専用チップを使う。このチップがプロセサの負荷を判断し、インテルや AMDのプロセサの電圧や動作周波数を制御する。

図3●サーバーの消費電力を抑える技術の一例。米HPのPower Regulatorの数値を示す
図3●サーバーの消費電力を抑える技術の一例。米HPのPower Regulatorの数値を示す
HP ProLaint DL380 G4 Serverを利用した場合の年平均値

 一方、ブレード・サーバーにノート・パソコン用の省電力プロセサを搭載するサーバー・メーカーもある。NECはブレード・サーバー「Express5800/110Ba-m3」にノート・パソコン用の省電力プロセサPentium Mを搭載した。NECは「ブレード・サーバー一枚を通常の半分の大きさにしても、電力消費を抑えられるので、標準ラックに2倍のブレードを詰め込める。高い集積度がうけて、都市部のデータセンターやSOHOから引き合いがある」としている。一つひとつのプロセサ速度は遅くなるが、ブレード数を増やすことで処理性能の低下を防いでいる。

ストレージ分野はMAID

 省電力を実現する技術は、ストレージやラック、電源にまで広がっている(図4)。ストレージ分野では、磁気ディスクの回転を制御することで、消費電力を抑える「MAID(Massive Arrays of Inactive Disks)」が登場した。富士通は2005年12月、MAID技術を採用したストレージ製品「ETERNUS3000シリーズ」を出荷した。省電力モードにMAID技術を利用する。

図4●さまざまな機器の省電力対策
図4●さまざまな機器の省電力対策 [画像のクリックで拡大表示]

 2006年1月には映像システム事業を手がけるNTTアイティが、映像機器を開発・販売するアサカと共同開発したストレージ製品を出荷した。2月末には、住商情報システムがストレージ・ベンダーである米コパンシステムズ製品の出荷を開始した。これらのストレージはいずれもMAID技術を利用している。さらに、NECが2006年度中に製品の出荷を予定するほか、米EMCや日立製作所が製品化を検討するなど、ストレージ・ベンダー各社はMAID技術に注目している。

 数十~数百Tバイトという大容量のストレージ製品は、磁気ディスクを大量に内蔵しており、すべてのディスクを常に回転させている。MAID技術は、基本的にすべてのディスクの回転を止めておき、アクセスがあったときに該当するディスクだけ回転させる。

 ストレージ業界団体ジャパンデータストレージフォーラムの宮坂新哉理事長は「一般的に、大容量ストレージが搭載するディスクのうち、同時にアクセスするのは多くても全体の4分の1。残りの4分の3を停止すれば、データセンターにおいて電力にかかるコストを単純計算で25%削減できる」と見る。

 ただし、回転が安定しないとデータの読み書きができないため、「10秒近い待ち時間が発生してしまう」(宮坂理事長)。そこで各ベンダーはMAID技術を使ったストレージを、バックアップ用に提案していく。また、富士通やNTTアイティは500Gバイト程度のキャッシュを用意し、書き込み時の待ち時間を短縮する工夫を施している。

メインフレーム技術を応用

 日本IBMや日立製作所、富士通といったメインフレーマ各社はIAサーバーの最上位機種にもメインフレームの技術を応用することで消費電力を抑えようとしている。

図5●日立製作所が開発した電源ユニット
図5●日立製作所が開発した電源ユニット

 日本IBMは今年2月、メインフレームで使っていた水冷システムをIAサーバーで利用できる空水冷ラックの出荷を開始した。ラックの冷却効果を高めて、空調設備の電力消費を減らすことを狙っている。

 日立はIAサーバーの上位機種やPOWER搭載サーバーにメインフレーム技術を用いた電源を搭載する。電源のシャーシを独自に設計し、メインフレーム向けの絶縁体素材などを利用した。電圧降下を減らし効率よく電力を使える(図5)。「汎用電源と比べてコスト的に割高になるが、10%ほど消費電力を抑えられる」(日立製作所第二サーバ本部の田上正彦担当本部長)。

今そこにあるITの電力問題(1) 
今そこにあるITの電力問題(2) 
今そこにあるITの電力問題(4)