自分自身の好みに合うLinuxを作ることは,決して難しくない。フリーソフトを手順よく組み合わせていくことで,ごく普通のユーザーであっても自分だけのLinuxを作成できる。本講座を読みながら,Linuxの仕組みを理解して『自分Linux』を完成させよう。

 今回,自分Linuxに導入するWebサーバー・ソフト「Apache HTTP Server」(以下,Apache)は,「Linuxでサーバーを稼働させるなら,まずこのソフト」というほど有名なサーバー・アプリケーションだ。そのため,Apacheの導入方法はインターネットを検索すると,星の数ほど見つかる。自分LinuxにApacheを組み込む場合でも,おおむねインターネットで紹介されている方法で導入できる。ただし,いくつか注意点がある。

 自分Linuxで,PerlやPHPで記述された動的なコンテンツを扱いたい場合,これらの実行環境を別途追加する必要がある。さらに,自分Linuxが備えていない機能もあるため,Apacheの設定からそれらの機能は除外しなければならない。

 そこで,本講座ではこれらの点に注意しながら,自分Linuxを,PerlやPHPで記述された動的なコンテンツも扱えるWebサーバーに仕立てていく(図1)。

図1●自分Linux作成作業の流れ
図1●自分Linux作成作業の流れ
今回は自分LinuxをWebサーバーに仕立てる。

Apacheの歴史

 構築を始める前に,Apacheの歴史を簡単に紹介する。最初に「WWW」(World Wide Web)の始まりについて確認しておこう。WWWは,1989年にスイスの欧州粒子物理学研究所(CERN)で研究者たちの情報交換用に開発された技術だ。

 当時,CERNでは加速器を使った高エネルギー物理学の実験を行っていた。しかし,実験の終了とともに,それまで集まっていた研究者たちが世界中に散らばってしまい,情報共有が難しくなった。

 そこでCERNは,情報共有が効率よくできるように,HTML(HyperText Markup Language)で記述された文献を閲覧させるためのWebサーバー・ソフトを開発した。

 その後,これに影響された,米国立スーパー・コンピュータ応用研究所(NCSA)が作ったWebサーバー・ソフトも登場した*1。NCSAが作ったWebサーバー・ソフトには,CGI(Common Gateway Interface)やSSI(Server Side Include)といったより高度な仕組みが備わっていた。そのため,NCSAが開発したWebサーバー・ソフトが徐々にシェアを伸ばしていった。

 ただし,NCSAのWebサーバー・ソフトはさまざまな機能を備えるがゆえに,多くのバグ(不具合)を抱えていた。この問題点を解決すべく,NCSAのWebサーバー・ソフトのバグ修正をしていた開発者たちが集まり,NCSAのWebサーバーを基にして,安定性や信頼性を重視した別のWebサーバー・ソフトの開発を始めた。このWebサーバー・ソフトがApacheである。

 現在,Apacheには,バージョン1.3系列とバージョン2.0系列,最近公開されたバージョン2.2系列という3種類の安定版が存在する。それぞれで加わった新機能は表1の通り。

表1●各安定版で追加された新機能
表1●各安定版で追加された新機能
[画像のクリックで拡大表示]

 2005年12月2日時点の最新版は,バージョン1.3系が「1.3.34」,バージョン2.0系が「2.0.55」,バージョン2.2系が「2.2.0」となっている。今回,自分Linuxにはバージョン2.0.55を導入する。

自分LinuxにWebサーバーを追加する

 まずは,今回追加するソフトのソース・アーカイブを入手しよう。前回も紹介した「Tuxfinder」から入手してもよいが,最新版が登録されていないこともある。そこで,今回は表2に示した開発元の公式サイト,もしくはそのミラー・サイトから入手した。

表2●追加するソフトウエア
表2●追加するソフトウエア
[画像のクリックで拡大表示]

 入手したソース・アーカイブは,/usr/local/src/origsoftディレクトリにコピーする。コピーしたら,図2のように展開する。

図2●追加するソフトウエアのソース・アーカイブを展開する
図2●追加するソフトウエアのソース・アーカイブを展開する

 なお,Perlの実行環境のソース・アーカイブは「perl」という名前で始まるファイルではなく,「stable.tar.gz」という名前になっている。ただし,このソース・アーカイブを展開すると「perl-5.8.7」というディレクトリ名で展開される。念のため,それぞれのソース・アーカイブを展開した状態を確認しておく(以下,誌面掲載時の1段幅で改行してあるのでご注意ください)。

 このようにPerlのソース・アーカイブは展開するまで,どのバージョンのソース・コードを含んでいるかが分かりにくい。よって,どのバージョンを入手したのかを忘れないため,

のようにソース・アーカイブ名を「stable.tar.gz」から「perl-5.8.7.tar.gz」に書き換えておこう。