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第1話 技術者に総スカン?ある若手デザイナーの悩みデザイナーと技術者を対立させる真犯人を推理せよ!
とある昼下がり,都内の喫茶「南海」にて――渋谷道玄坂の奥の奥。住宅街に紛れた小さな喫茶店に,深刻な表情の若者が入っていった。若者は,ノートパソコンを開き,トロピカルブレンドのハーブティーを楽しむ中年紳士に声を掛けた。 ケイスケ:あなたがホラムズさん? ホラムズ:君は誰かね? ケイスケ:渋谷敬助です。 ホラムズ:ああ,パステル君の部下のデザイナーの若者というのは君のことだね。 ケイスケ:パステル? ああマネージャのことですね。そうです。 ホラムズ:で,彼女は? ケイスケ:マネージャは客先での打ち合わせが延びていて,まだ来られないそうです。先に僕だけ行ってくれということで。 ホラムズ:では時間も無いことだし,パステル君抜きでもわかる範囲で,君たちの相談に乗ってあげよう。確か,Ajax開発でのトラブルの件だったね。 ケイスケ:あ,それはマネージャの相談です。僕の相談は違うんです。 ホラムズ:それは聞いていないな。 ケイスケ:えーと,実は僕,ホラムズさんのことを疑っていたのではっきり言わなかったんですよ。 ホラムズ:疑っていた? ほほう,私のどのへんが疑わしいのかね? ケイスケ:なんか,うれしそうですね。 ホラムズ:世間は私を奇人変人というのでね。期待を裏切らないように疑わしい行動を取るようにしているのだ。やはり,イギリスかぶれのひねくれた性格を演じているところが疑わしいかね? ケイスケ:僕,ずっとホラムズさんのことはマネージャが崇拝する技術者ということしか知らなかったんです。で,マネージャはあれでしょ? 服装にも無頓着で,路上でたたき売られていたブランドの偽物を平然と着て客先に行くような人ですよ。しかも,ブランドを知らないから,偽物だと言われても何が悪いのか理解できないし。そういう人が崇拝する人だから,同じような人だとばかり…。 ホラムズ:君にとって,ブランドを知っていることはそれほど大切なのかね? ケイスケ:そりゃそうです。ブランドはデザインのアイデンティティですからね。デザイナーなら気にして当然です。だから,ホラムズさんが本物のブランドスーツを着ているのを見て,これなら相談できると思ったんです。 ホラムズ:イギリス製ではあるが,別に高価なスーツというわけではないよ。 ケイスケ:スーツは値段じゃないですよ。肩肘張らないで自然に着こなしていることが大切なんです。 ホラムズ:なるほど。 ケイスケ:それにこの店,マスコミの取材を拒否しているから,“通”しか知らない良い店ですよ。そういう店に常連として通っているというのは,本物を見分ける目を持っている証拠です。これなら,僕も本気で相談ができると思いました。 ホラムズ:君もこの店の価値がわかるのか。ならばそれを見抜ける眼力に免じて,君の相談を聞いてみよう。
ケイスケの悩みケイスケ:実は僕,会社を辞めようかと思っているんです。 ホラムズ:ほう。いきなりおだやかじゃないな。しかし,君が辞めるとパステル君が困るだろう。現在の開発プロジェクトは佳境だと聞いているが。 ケイスケ:そうでしょうね。でも,こっちが良い仕事をしようとしても,それを邪魔されてばかりなんですよ。僕はね,仕事をしろと言われるのなら耐えてみせるつもりだったんですよ。でも,仕事をしようとしているのに邪魔をされる職場がまともな職場と言えますか? ホラムズ:ちょっと待ちたまえ。話が理解できないのだが,いくらパステル君が見かけに気を使わない女性だからといって,仕事の邪魔をするような性格だとは思えないのだが…。 ケイスケ:それは,マネージャの本性を知らないからですよ。それに,邪魔をするのはマネージャだけじゃないんですよ。他の技術者も,みんな同じです。 ホラムズ:ほう。みんな同じかね。 ケイスケ:そうです。技術者なんてみんな同じですよ。みんなデザイナーをバカにして,嫌がらせをして裏で笑ってるんだ。 ホラムズ:ほほう。 ケイスケ:なんか,うれしそうですね。 ホラムズ:解き明かすべき謎の匂いを感じてね。私はパステル君が自分の趣味に無制限でばく進して周囲に迷惑を掛けるところを何回も見ているが,他人に嫌がらせをするような人物ではないことを知っている。それにもかかわらず,君は嫌がらせをされていると主張している。これは大きな謎だね。 ケイスケ:念のために言っておきますけど,僕は嘘なんかついていませんからね。 ホラムズ:そうだね。もちろん,君が嘘をついていないという前提で話を進めよう。 ケイスケ:じゃあ,やっぱり悪いのは技術者ですか? ホラムズ:いや,彼らのことも信じてみよう。 ケイスケ:それじゃ,筋が通りませんよ。 ホラムズ:だから,謎と言っただろう? 一見矛盾しているように見える状況には,そう見せかけているトリックが存在するはずだ。そのトリックを解き明かしていこうじゃないか。 ケイスケ:えっ。本気で言ってるんですか? そんな名探偵みたいなことを。 ホラムズ:残念ながら私は名探偵ではないが,実はそのトリックには心当たりがある。デザイナーの要求を技術者が拒絶する影でほくそ笑む第3の存在についてね。 ケイスケ:え,本当ですか?! 教えてくださいよ,それは誰なんですか? ホラムズ:その前に,確認のためにまずは証拠を集め,推理を進めてみようじゃないか。根拠もなく,無実の人を犯人扱いすることはできないからね。 ケイスケ:はい,わかりました! 第2話につづく… 次回予告・技術者に嫌がらせをされて仕事が進められないデザイナーのケイスケ まずは確実な情報収集から開始だ。推理せよ!ホラムズ。真相を突き止めよ!
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