Web2.0時代におけるネットでの人々の振る舞いはどうなるのか。Web解析サービス大手である米オムニチュアのジョッシュ・ジェームスCEO(最高経営責任者)兼共同創業者は利用法は、独自の視点から、「本当の意味で効果的にWebを使うようになるのが2.0の時代だ」と語る。(聞き手は小野口 哲)

まずオムニチュアがどのような企業なのか聞きたい。

写真●米オムニチュアのジョッシュ・ジェームスCEO兼共同創業者
写真●米オムニチュアのジョッシュ・ジェームスCEO兼共同創業者

 ECサイトや各種のネット・サービスをはじめ、Webサイトを運用する企業に向けて、サイトの効果を測定し、ビジネスをどう最適化するかをコンサルティングする事業を手掛けている。だから自社のサービスを「Web解析」ではなく、「オンラインビジネスを極大化させるためのプラットフォーム」と呼んでいる。

 ユーザー企業が望んでいるのは、ビジネスを拡張することであって、オムニチュアのサービスはそれを手助けするためのものだ。この方針が受け入れられ、オムニチュアはWeb解析分野で最大規模の企業に成長した。

 原則としてオムニチュアでは、顧客のWebサイトへのアクセス数に基いて利用料金を増減させる。Webへのアクセスが増えれば収益も拡大する。Webは急拡大しているから、当社はソフトウエア会社として世界で最も速く成長している企業の一つだ。既存のソフトウエアをSaaSに置き換えて提供するのではなく、成長分野に集中しているからこそ、こういったことが可能になる。

年間1兆4000億回のアクセスを解析

 これまでも「Webのログ解析ツール」は存在していたが、オムニチュアは、Webサイト解析をSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)で提供する。単にログを解析するのではなく、Webサイトに専用のスクリプトを組み込み、Webサイトのユーザーのアクセス状況やネット広告の効果測定などを把握できる点も我々の強みだ。

 当社のサービスを使えば、トランザクションの一つひとつまでトラッキングできる。例えばあるECサイトで、ソニー製のノート・パソコンは買ったけれどプリンタは買わなかった取引、あるいは500ドル以上買い物をした取引を簡単にリストアップすることができる。個人情報は収集していないが、特定の人物からのアクセスと購買記録などのデータを結びつけることも可能だ。ある人物が毎日、特定のECサイトにアクセスしており、そこで過去6回の購入履歴があり、購入しているのは常にスポーツ関係の品物だ、といったことが分かる。

 現在の顧客は世界で2000社ほど。米AOLのほか米イーベイ、米マイクロソフト、米オラクルなど、膨大なアクセスのあるWebサイトを管理する企業が多い。昨年1月に日本法人を設立したが、すでに花王やマツダ、楽天をはじめとした100社以上の企業が、当社のサービスを利用するようになった。

Webの利用者は膨大な数に上る。有効な解析の為のデータを提供するのは簡単ではないはずだ。

 確かに解析しているトランザクションの数は膨大なものだ。トランザクションの数は年間で1兆4000億回に達する。SaaSの代表的な企業である、米セールスフォース・ドットコムでさえ1四半期当たり50億回、年間で200億回程度のトランザクションしかない。

 当社のデータセンターで記録しているデータの量はベタバイトを超えている。利用するサーバーも8000台程度ある。単に数が多いだけではない。顧客のWebサイトへのとトランザクションは、クリスマスなどのイベントの時期に急増する。こういったトランザクション量の変化に耐えることができる。顧客からの要求に対しては、「マスター・サーバー」を利用して各サーバーに処理を分散させ、効率よく処理できる仕組みにしている。

Webでやり取りするデータが急増している

“Web2.0”についてはどう考えているか。

 Web2.0の定義はいろいろだが。私の考えでは、本当の意味で効果的にWebを使えるようになるということだ。もう一つ言えることは、Webを通じてやり取りするデータ量がこれまでになく増えているということだ。

 ただ一般の企業や消費者は、自分たちが利用しているものが“Web2.0”かどうかを気にしているわけではない。企業であれば、自社の収益が増加するかどうかが一番大切なことだ。

 ブログ、RSS、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などの新しい技術やサービスが登場し、一般消費者や企業がこれらを活用するようになった。Web2.0の時代になって、ネット・ビジネスの規模は確実に大きくなってきた。ただ企業がこれらの新技術やサービスを使った時に、どの程度の効果があるのかを把握するのは簡単ではない。ここに当社のビジネス・チャンスがある。