OKI
井上 伸也 OKI
IPシステムカンパニー
IPシステム本部IPソリューション部
井上 伸也

無線IP電話を導入する際の現地調査で“音切れ”が発生した。無線機器の不良や設定ミスはない。無線で流れる無線パケットを調べてみると、再送パケットが多発している。これが音切れにつながっているのは明らかである。しかし、再送パケット多発の原因究明に苦労した。また、この問題の解決にあたり、無線LAN機器の性能の差を認識させられた。

 無線IP電話の導入を進める過程において、OKIでもさまざまな問題に直面してきた。音声が途切れるという問題はこれまで何回か発生したが、そのなかでももっとも原因究明に時間を要したケースがあった。調べていくうちに“電波”部分に原因があることがわかってきたが、当然目で見ることもできなければ、測定するようなツールもない。このため、原因究明に四苦八苦することとなった。

 また、このトラブルの解析を進める中で、同じ無線LAN機器でも意外な性能差があることがわかった。

原因不明の音切れ発生

 あるユーザー企業で無線IP電話の導入を進めている際、「音切れ」が発生した。実際に導入する前の段階に実施した現地調査でのことである。

 通常、無線IP電話を導入する場合、事前に現地調査を実施する。無線LANアクセス・ポイントを、ポールなどを用いて仮設置し、実際に無線IP電話端末を使って通話試験を実施する。これによって、アクセス・ポイントの位置や電波のカバー範囲の精度を上げる。

 この現地調査を実施しているとき調査メンバーから、「音質が悪い」「音飛びがする」などの申告があがった。私も直接確認してみたところ、明らかに「何かおかしい」と感じるほどの音質劣化がみられた。最初は機器の不良や設定ミスを疑った。しかし、何度チェックしてもそれらに問題はない。次に、外部から漏れてくる外来波の影響も考えられた。しかし、スペクトラム・アナライザを用いた測定結果では、音切れの原因となるような外来波は検出されなかった。

 実は同じような現象は、このユーザーだけでなく、ほかの導入済みユーザー企業でも発生しており、はっきりとした原因究明がされないまま問題となっていた。このため、今回の現地調査で、音声品質を入念に確認するように心がけていた。このユーザーのケースでは、音質劣化の度合い自体が非常に激しかったため、導入前にこの問題を発見することができた。

パケット・キャプチャによる現象の解析

 音切れの原因は、機器の不良や設定ミスでも、外来波の影響ではない。そこで、無線LAN上を流れる音声パケットを調べて音切れを解析することにした。パケットの調査には、パケット・キャプチャ・ソフト「AiroPeek」を利用した。

図1●パケット・ロス発生時のシーケンス
図1●パケット・ロス発生時のシーケンス
 音切れが発生している際の、無線区間のパケットをキャプチャした結果を調べた。通常では発生しないような、パケットの再送が多発している。無線LANでは図1に示すように、パケットを送受信する際に、アクセス・ポイントと端末間で「ACK」パケットを使って確認応答を実施している。受信側からこの「ACK」パケットが帰ってこなかった場合、パケットを再送するという仕組みである。

 したがって、パケットが受信側でパケット・エラーが多発した場合、この再送パケットが大量に発生する。送信側の最大再送回数を超えても、受信側がパケットを受信できない場合はパケット・ロスとなる。なお、再送回数の最大値は端末やアクセス・ポイントによって異なり、設定を変更できるアクセス・ポイントが多い。