結果(1)
乾いた指より濡れた指が難しい

 最初の検証(前編参照)では,指の状態変化が認証回数に及ぼす影響を調べた。まず,通常の指の状態で登録し,同じ状態の指で30回照合を試行したところ18機種すべてで認証できた。次に,登録は通常の指の状態で行い,濡れた指,乾いた指,汚れた指で30回ずつ試行した。

 今回試行したすべての状態でミスなく認証できたのは,NECのPU800-30とビーエムエフのGIGIO-100の2機種だった。このほか,濡れた指,乾いた指,汚れた指のいずれかで20回以上認証できたものは多かった(図7)。内訳をみると,乾いた指と汚れた指を認証できたセンサーは多いが,濡れた指を認証できたセンサーは少なかった。

図7●認証回数の結果一覧
図7●認証回数の結果一覧
濡れた指,乾燥した指,汚れた指で30回試行した結果,20回以上認証された機種を示した。
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 一般に他人受け入れ率は本人拒否率より数桁低いので,濡れた指や乾いた指を多く認証できた製品が,他人の指を受け入れてしまいやすいとは限らない。念のため3種類の状態でどれも25回以上認証した四つの製品(三菱電機のDTLmk4,テクノイマジアのFP-PLUS,NECのPU800-30,ビーエムエフのGIGIO-100)について,同じ手の異なる指でも試行してみた。どれも誤って認証することはなかった。

濡れた指に強かった光学式と感圧式

 方式によって大きく結果が分かれたのは濡れた指の場合(図8)。検証に当たっては,霧状の水を指に1~2回吹きかけて濡れた状態にした。認証できたのは光学式センサーの3機種(三菱電機のDTL mk4,テクノイマジアのFP-PLUS,NECのPU800-30)と感圧式センサー(ビーエムエフGIGIO-100)のみ。他の機種の場合,読み取った画像が一面真っ黒になってしまった(図9)。

図8●指の条件を変えたときの認証回数
図8●指の条件を変えたときの認証回数
濡れた指,乾いた指,汚れた指でそれぞれ30回指紋認証を試行したときの認証回数。濡れた指は霧状の水を1~2回吹きかけて一面湿った状態にした。乾いた指は消毒用アルコールで指をふいて乾かした。1~2回試行するたびにアルコールで指をぬぐった。汚れた指は油性マジックで指紋の表面にマークを書いた。照合度のしきい値はデフォルト。HFP-US 0102は,デフォルトのしきい値が高めなことと,指でシャッターを毎回押し上げる構造で慣れが必要だったため,今回の検証では認証回数が低かった。
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図9●濡れた指と乾いた指の読み取り画像
図9●濡れた指と乾いた指の読み取り画像
濡れた指だと画面が真っ黒になってしまい,乾いた指だと指紋がとぎれとぎれになってしまう。

 次に乾燥した指を試した。今回は意図的に指の油分や水分を拭き取る方法で乾燥指を模擬した。具体的には,消毒用のアルコール液で指を丹念に拭いてから完全に乾かした。実験の結果,20回以上認証された装置は18機種中14機種。方式による違いは見られなかった。

 最後に汚れた指を試した。作業中にマジックペンの先が指に触れてしまった場合を想定し,油性マジックで指先に印を付けた。こちらも20回以上認証された装置は15機種で,方式による違いは見られなかった。