指紋認証装置はごく身近な場面で使われるようになった。例えば,携帯電話のユーザー認証や,日常的に使うコンピュータへのログオンやスクリーン・セーバーの解除などだ。指紋認証を導入すれば,パスワードを複雑にしたり複数のパスワードを管理しなくてもセキュリティを高められる。

 指紋認証はまず指紋を登録し,そのデータに照らし合わせて認証もしくは識別する*1。このとき,指紋の読み取り精度,登録データとの照合アルゴリズム,本人かどうかの判定のしきい値が認証精度に影響する。製品には精度を表す指標として,他人を受け入れてしまう他人受け入れ率(FAR:False Acceptance Rate),本人を拒否してしまう本人拒否率(FRR:False Rejection Rate)が記載されている。例えば,FARは0.001%や0.0001%,FRRは0.1%や0.05%といった値が並ぶ。これらの算出方法はJIS-TR(Technical Specification)で標準仕様が公開されており,各メーカーは数百から数万という膨大なデータを基に算出している。

汚れ,濡れ,乾燥など指の状態は変わる

 FARやFRRを求めるためのテストでは,多くの人が正しい利用方法に基づいて使う。携帯電話やパソコンで利用する場面を考えると,むしろ多少いい加減な使い方をしても大丈夫か,といったあたりが気になる。例えば指先がインクで汚れるなどは日常茶飯事だ。取扱説明書には,「指が乾いていたり,汗や水で指が濡れていると指紋を認識できない場合がある」と記載されている*2。体質によっては汗を多くかくため指が濡れていたり,家事で指先が荒れてしまい乾燥している状況が十分考えられる。薬品を扱う仕事に従事する場合は,指紋が摩耗しているかもしれない。

 このほか指紋認証で気になるのは,人工指を受け入れるかどうかだ。2002年に人工指が指紋認証装置で認証されるという発表があったが,3年たった現在はどうなのだろうか。

 そこで,濡れたり乾燥するなど指の状態が変化しても認証できるのか,人工的に作った指紋は認証されてしまうのかという2点について調べた。検証した指紋認証装置は18機種(図1)。PCに接続して使うものが大半で,出退勤管理やパソコンのログオンなどに使える。

図1●検証した機種
図1●検証した機種
USB接続の外付け型を15機種,ノートパソコン内蔵型を2機種,携帯電話内蔵型を1機種検証した。
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 これらの装置の形状は多様である。比較的大きめな製品から,小型で薄い製品,パソコンや携帯電話に組み込まれているものがある。これらはセンサーの読み取り方式である程度分類できる。形状が大きい製品には光学式センサーが多く,小型で薄い製品や組み込み型には静電容量方式,電界強度測定方式や感熱式などのセンサーが多い。サンワサプライのMA-FP74UとビーエムエフのGIGIO-100はマウス一体型,ソニーのFIU-810-N03とエムコマースのBioSlimDisk iCoolはUSBフラッシュ・メモリーとして使える。