図1 SIMカードを抜き挿しして情報を移す(イラスト:なかがわ みさこ)
図1 SIMカードを抜き挿しして情報を移す(イラスト:なかがわ みさこ)
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図2 SIMカードを勝手に使われると自分に課金される(イラスト:なかがわ みさこ)
図2 SIMカードを勝手に使われると自分に課金される(イラスト:なかがわ みさこ)
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 SIMカードとは,携帯電話に入っている抜き挿し可能なICカードのこと。SIMは,subscriber identity moduleの略だ(図1)。

 SIMカードの目的は,電話機を変更する際に携帯電話の利用に必要な情報を簡単に移せるようにすることである。SIMカードには,電話番号や契約者を識別するための情報が保存されている。そのほかオプションでアドレス帳やメールも保存できるが,携帯電話会社によって保存できる内容は若干異なる。

 SIMカードはNTTドコモ,ソフトバンクモバイルの第3世代携帯電話(3G)端末,およびKDDI(au)の一部(CDMA 1X WIN)の3G端末に入っている。どれも機能的には同じだが,各社で名称が異なる。NTTドコモは「FOMAカード」,KDDIは「auICカード」,ソフトバンクモバイルは「USIMカード」と呼んでいる。

 SIMカードというと,もともとは海外のGSMという携帯電話方式で採用されたものを指す。3Gで使われているものはGSMのものよりも機能が拡張されており,NTTドコモとソフトバンクモバイルが採用しているW-CDMAという方式では「USIM」,KDDIが採用しているcdma2000では「R-SIM」というのが規格上の名称だ。

 それぞれの方式に合わせた仕様になっているため,USIMとR-SIMに互換性はない。正式には,両者を合わせて「UIM(user identity module)カード」と呼ぶのだが,厳密には使い分けずにSIMカードと呼ばれることが多い。

 海外では異なる携帯電話会社の電話機でも,方式が同じならSIMカードを差し替えられるのが一般的。しかし,日本ではすべての携帯電話会社が,電話機に自社が販売したSIMカードでしか動作しないようにする「SIMロック」をかけている。これは,携帯電話会社ごとに販売代理店に奨励金を払って電話機の販売を促進するという現状のしくみを維持するためだ。

 SIMカードの中には,課金に必要な契約者の情報が入っているため,紛失すると思わぬトラブルに巻き込まれることがある。実際に起こったトラブルの例を紹介しよう(図2)。

 あるユーザーが海外旅行に行き,旅先で携帯電話を紛失してしまった。その携帯電話は3Gの機種だったが,海外では使えない機種だったので,ユーザーは「まあいいか」と思い,携帯電話会社には帰国後しばらく経ってから連絡した。すると翌月,心当たりのない多額の請求が来た。海外で落とした携帯電話のSIMカードを誰かが自分の携帯電話機に挿して,勝手に使ってしまったのである。

 このトラブルの原因の一つとして,SIMカードに関する知識不足が挙げられる。日本の携帯電話会社は,ユーザーの利便性を考えて,携帯電話の契約時にSIMカードを海外対応にして提供している。このため,端末が海外で使えない機種でも,中に入っているSIMカードは海外で使えてしまうのだ。海外対応にしたくなければ,ユーザーから申し出る必要がある。

 こうしたトラブルを防ぐため,携帯電話会社が参加している電気通信事業者協会では次の2点に注意するように呼びかけている。まずは,SIMカードのセキュリティを高めるために4~8桁の暗証番号である「PINコード」を設定すること。PINコードを設定すると,SIMカードを挿したり電源を入れるたびにPINコードの入力が必要になる。もう一つの対策は,当然のことだが,携帯電話を紛失したらすぐに携帯電話会社に連絡することだ。