CIO(情報戦略統括役員)の名前が世界で初めて使われたのは、1980年のITカンファレンスでのこと。米ファースト・ナショナル・バンク・オブ・ボストンの上席副社長が、技術に長けてそれをビジネスに応用できるスーパーマンこそがCIOであり、CEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)と同等の重要性を持つポストだと説いた。25周年を迎えるこの比較的新しいポストはその期待通りに評価されてきたのだろうか?

 確かに、今、CIOは経営を革新するうえで重要なポストになった。だが、彼らの実態はあまりに過大な期待とストレスであふれている。

 CIOを顧客に持つ米大手ソフトウエア会社の副社長であるスティーブからメールが届いたので紹介しよう。最近、大手顧客のCIOにアンケートを取ったというのだ。その内容がまさに「あなたを夜眠れなくしている事象は?」であった。

「ほかの経営陣はIT問題にうとい」

 「次のセキュリティーの脅威がどこから来るのか?」「自社ネットワークへの複数のアクセスをどうやって管理するのか?」「限られた予算とリソースでどうやって複数のITプロジェクトをやりくりするのか?」「なぜCEOやCFOなどほかの経営陣がIT問題にうといのか?」「ビジネスを改善するために技術をどう活用するか?」

 インターネットの出現もCIOのポジションを一変させている。ITはもはやバックエンドでコスト削減を担当するだけのツールではなく、フロントやセルサイドといわれる企業の売り上げや利益に貢献する。ITが企業の牽引役になるのだ。

CIOが中核にいなくて改革はあり得ない

 だが、そんな期待に反して、インターネット戦略のオーナーシップは、広報部・マーケティング部・宣伝部が主体だ。IT部門が戦略にかかわる度合いはまだまだ低い。CIOがビジネスに長けるという当初の期待値は実現されていないようだ。

 多くのCIOが複数の悩みを抱えている。期待値とのギャップにあせりすら感じている。

 インターネットを中心とするネットワークのダイナミズムは今後も会社経営を大きく変えていくはずだ。そんなとき、CIOが経営の中核にいなくて改革はあり得ない。このコラムは、そんなCIOへの応援歌である。

石黒 不二代(いしぐろ ふじよ)氏
ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO
 シリコンバレーでコンサルティング会社を経営後、1999年にネットイヤーグループに参画。事業戦略とマーケティングの専門性を生かしネットイヤーグループの成長を支える。日米のベンチャーキャピタルなどに広い人脈を持つ。スタンフォード大学MBA