エンパワー・ネットワーク
プリンシパル
池田 輝久

初めて会った人に自分や会社を魅力的に伝えることは,ビジネスパーソンの大切な第一歩である。相手から「君,すごいね」,「君の会社,すごいね」,「その製品,すごいね」と言ってもらいたいものだ。しかし現実は,そううまくはいかない。何となく自信なさげに,遠慮しながら,型どおりの挨拶や説明に終始することがほとんどだ。では,有能な“価値の伝達者”になるには何が必要なのか。鍵は自己紹介にある。



 あなたは,お客と接する最前線の人材だ。では,お客があなたに会ってくれる理由は何だろう? それは,あなたが何かをプレゼントしてくれるのを期待しているからだ。

 では何をプレゼントすればいいのか? それは“価値(魅力)”である。“価値(魅力)”の伝達で最も大切なことは,“より魅力的なもの”として伝えることだ。

 では,何を魅力的に伝えればいいのだろう? 私生活での体験を思い出してほしい。立ち寄ったブティックの店員や,家に来たクルマのセールスパーソンはみな,今あなたに勧めているものこそベストだと強調するでしょう。クルマの宣伝を見ると,そのクルマに乗ればスターになれるように感じるし,ケーキを見るとどれも実際以上に美味しそうだ。

あなたが売り込むべきものは三つ

 あなたも,できるだけ魅力的に売り込まなければならない。売り込むものは,「人」,「会社」,「製品・サービス・ソリューション」である。

 あなたは素晴らしいビジネスパーソンであり,あなたの会社は立派で,紹介する製品やサービスがどこよりも優れたものだから,あなたはお客を訪ねるのだろう。それらに自信がなければ,訪ねることはできなかったはずだ。

 重要なのは,この三つがお客の購買決定要因のすべてであり,その重要性はそれぞれ3分の1ずつだということである。営業担当者やSEは現在,三つのうち「製品・サービス・ソリューション」にほとんどの時間をとられていると言っても過言ではない。次々に出てくる新しいものに対応するのにてんてこ舞いの状況だ。しかし,よく考えてほしい。あなたたちが最も力を入れ,時間を割いているものこそ,他社との差異化が最も難しいということを。

 逆に最も差異化がしやすく,最もその魅力を伝えやすいのは「人」である。自分自身であり,自分の仲間だ。その次が「会社」。自分を含めた「人」の価値を認めてもらえれば,その人たちが勤める「会社」の価値も認めてもらいやすい。「人」や「会社」が認められれば,提案している「製品・サービス・ソリューション」も素晴らしいものになることは間違いない。この順番を間違えずに,お客に“価値(魅力)”を伝えてほしい。その際は,「一番です」,「最高です」と胸を張って言わなければならない。お客は最高のものを手に入れたいからだ。