前回の記事では、「運用の重要性を確認する」ということで、Webサイトの公開、もしくはリニューアル後の運用時に起こりうる問題点を挙げた。今回はどうすればそういった問題を事前に防ぐことができるのか、また問題が起きてしまった時の対処法などについて、もう少し具体的に考えてみることにしよう。

3つの問題点

まずは、問題点を再度確認しておきたい。前回の記事中では、考えられる原因として以下の3つについて述べた。

  • そもそも更新を考慮した設計がなされていない
  • 更新者のスキルを考慮した運用方法になっていない
  • サイト構築時では検証作業をしていたのに運用時ではやっていない

それでは、さっそく上から順に対策を考えてみよう。

更新を考慮した設計

ひとつめの問題は、企画・設計時において更新のことを念頭においていない為に起きる問題だ。したがって、当然ながら、更新・運用を考慮してサイトを設計することが最大の対処法となる。一番のポイントは、記事本文など内容を書き換える必要のある箇所、また書き換えたことによる影響を理解しておくことではないだろうか。デザインをする立場であれば、その部分に変化があってもレイアウトやコードに問題が起きないようにデザインをする必要がある。一方Webサイトを発注する立場やサイトを統括する立場であれば、Webページを1枚のビジュアルとして見るのではなく、更新がおこなわれた後のことを考慮したレイアウトがなされているのかをしっかりと確認する必要があるだろう。

【図1】更新後、コンテンツの量が変化したら問題が発生する基本的な設計ミス。1枚の「絵」だけで良し悪しを判断するのは危険

もちろん、このような致命的なミスはそうそう起こるものではない。しかしながら、構築のみを依頼し、その後の運用を自社でおこなうという場合に起きてしまうと、修正もままならないということもありうるため、十分に気をつけていただきたい。

また、既に構築、運用中のサイトで問題が発生している場合には、突貫的な修正が難しく、すぐに根本的な問題解決が必要となるかもしれない。この場合に注意することは、その場しのぎの対応をするだけではなく、再び同じような問題がおきないようにチェックすることだ。もちろん、急がなければならない問題であれば、とりあえずその場をしのぐ必要はある。しかし常に作業後のチェックを怠っていると、何度も同じ問題に悩まされることになるだろう。

更新者のスキルレベルに応じたWebサイト構築

Webサイトの更新をおこなうのは、それを専門としているプロだけではない。前述のようにWebサイトの構築を制作会社に依頼し、日々の運用は自社でおこなう、といった場合には更新者にHTMLの知識がまったくない、などということもよく聞く話だ。

そこで、構築時におこなうべきこととしては、まず更新者のスキルレベルを確認することであり、それに応じて更新が可能なようにしていくことだろう。さて、更新者のレベルといってもさまざまな可能性が考えられるが、今回は次のような分け方で考えてみよう。

  • HTMLをそれなりに理解している、もしくはそれ以上
  • HTMLがほとんどわからない、もしくはまったくわからない
  • 機械による自動的な更新

1つめのケースは、比較的問題にならないと思われがちである。むしろ中途半端にHTMLを理解している為に起こる問題もある。というのも理解しているがゆえに、触る必要のないところまで書き換えてしまうのだ。このような問題を防ぐ為には、更新者のスキルをよく理解したうえで、必要に応じて作業範囲をあらかじめ明確にしておくのがよいだろう。CMSなどを導入しているのであれば、システムによって更新できる箇所が限定することで問題が起きる可能性はより低くなる。

【図2】例えば、連載記事であれば基本的に本文およびタイトルだけが変更できればよい

次に、更新者がHTMLを理解していない場合には、最低限の更新作業ができるように教育する必要があるだろう。とはいえ今後Webサイトの更新ばかりをやり続ける担当者にもならない限り、あくまで業務の一部となるわけであり、着実なスキルアップを期待することは難しいかもしれない。そこで、可能な限り前述のようにシステム的な制限を加えることはもちろんとして、そのような更新者を対象としたわかりやすいマニュアルなどのドキュメントを制作することも検討するべきだ。

最後に、機械的に更新がおこなわれる場合の問題を考えてみよう。この場合、システムを構築する段階で十分な検討がなされていれば、基本的には大きな問題は起こらないはずだ。ただし、アクセシビリティの観点からは、まだまだ人の手が必要なこともある。

例えば、画像を伴う記事を自動的に生成するシステムがあるとしよう。もしも、画像の内容を詳しく解説するような記事をWebページ化する場合、自動的に書き出された代替テキストは適切なものになるだろうか。現時点の技術では画像の内容まで判別するようなシステムを作るのは非常に難しいのではないかと思う。

というわけで自動更新システムを利用するとしても、内容によっては、確認の機会とその結果を反映させる修正の工程が必要になる、と考えられる。

以上のように、おおまかに3パターンについての考え方を述べてきたが、実際にはもっといろいろな状況が考えられる。例を挙げると、更新時には特定のソフトウェアを使わなければならない為、そのソフトウェアで更新できるように設計するとか、さまざまなレベルの更新者が混在しているために、それなりに更新ができるようにしつつ、詳細なマニュアルも必要である、ということもあるだろう。

いずれにしても、できるだけ早い段階で誰が更新・運用をおこなうのかをはっきりさせ、その担当者にもプロジェクトの一員として取り組んでもらうことが重要になってくるだろう。

さて、残るは運用時の検証についてであるが、ここについては次回、詳細に検討してみたい。