今回は,中堅・中小企業の業務アプリ利用実態調査の番外編として,中堅企業における運用管理ソフトの利用実態を取り上げる。運用管理ソフトを「導入済み」の中堅企業は全体の17.7%に過ぎない。ただし,「導入を検討している・関心がある」は35.2%で,中堅企業のおよそ半数が運用管理ソフトの導入に前向きであることが明らかになった(図1)。

図1●運用管理ソフトの導入の有無(Nは有効回答数)
図1●運用管理ソフトの導入の有無(Nは有効回答数)

 調査は2006年7月から11月にかけて,年商50億円以上300億円未満の中堅企業5000社に対して実施した。該当企業に調査票を送付し,うち664社から回答を得た。

当たり前になりつつあるバックアップ管理ツール

 企業の年商規模別に運用管理ソフトの導入状況を見ると,年商100億円以上300億円未満での導入率は22.3%。これに対して,年商50億円以上100億円未満の企業の導入率はわずか10.9%で,年商100億円以上の企業の半分以下となる。

 次に機能別に管理ツールの導入状況を示す(図2)。管理対象が幅広い「運用管理ソフト」より明確に答えやすいせいもあってか,導入率は全体的に高めとなっている。中でもバックアップ管理ツールは,46.9%の企業が「導入済み・構築中」である。これに「導入を検討している・関心がある」の16.3%,「導入の予定はないが,必要性は感じている」の26.0%を合わせると,ほぼ9割の企業が導入に前向きという結果が出た。中堅企業であっても,情報システムを運営する以上,バックアップ管理ツールは欠かせない存在になっていると言えるだろう。

図2●機能別の運用管理ツール導入状況(Nは有効回答数)
図2●機能別の運用管理ツール導入状況(Nは有効回答数) [画像のクリックで拡大表示]

 その他の機能別ツールの導入状況を見ると,ソフトウエア資産管理・配布管理ツールの「導入済み・構築中」が24.3%で,バックアップ管理ツールに続いている。「導入を検討している・関心がある」の19.7%,「導入の予定はないが,必要性は感じている」の36.9%を「導入済み・構築中」に合わせると,こちらも導入に前向きな企業の比率が8割以上に達する。パソコンソフトのライセンス管理やソフトウエア配布などの「IT資産管理」は,システム運用管理業務での必須要件になりつつある。

製品シェアは日立JP1がトップに

 最後に「運用管理ソフト」の製品シェアを紹介する。製品シェアのトップは日立製作所のJP1で33.0%(図3)。富士通のSystemwalkerが24.3%でこれに続く。3位は日本IBMのTivoliだが,シェアは一桁台の7.0%にとどまっている。

図3●運用管理ソフトウエアの製品別シェア(Nは有効回答数)
図3●運用管理ソフトウエアの製品別シェア(Nは有効回答数)

 企業の年商規模別に見ると,100億円以上300億円未満では日立のJP1が36.0%と,他社製品を引き離している。これに対して,年商50億円以上100億円未満では,JP1と富士通のSystemwalkerが24.1%の同率でトップに並んでいる。

 以上の製品シェアについては,有効回答数が少ないため参考値としてお考えいただきたい。それでも,年商規模の大きな企業におけるJP1の強さが目立つ結果となっている。

■伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

【略歴】
ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て98年に独立し,ノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。