写真1●サンタオのファム・クアン・カン テクニカルマネジャー
写真1●サンタオのファム・クアン・カン テクニカルマネジャー

 「日本の顧客は品質重視で納品の遅れも許されないことをよく知っている。我々は徹夜してでも、納期までに品質を確保したシステムを完成させる」--。ホーチミン市の中心部から約7キロ離れたタン・ソン・ニャット国際空港近くに拠点を構える中堅インテグレータ、サン・タオのファム・クアン・カン テクニカルマネジャー(32歳、写真1)は、こう説明する。「実は今日も徹夜明けです」と続ける。

 1998年に設立したサン・タオは、現在105人の技術者を抱えている(写真2写真3)。技術者の平均年齢は26歳。他社と同様に若者が多い。32歳のカン氏はベテランの部類に入る。

写真2●ホーチミン市にあるサンタオの開発現場   写真3●サンタオのオフィス外観
写真2●ホーチミン市にあるサンタオの開発現場   写真3●サンタオのオフィス外観

 同社の売上高に占める日本向けの事業割合は9割以上を占める。残りは豪州と米国向けだ。ただし技術者の多くは日本語が話せないので、日本語の授業を毎日開催するなど、日本語教育を強化している。

 得意とする案件は、携帯電話やPDA(携帯情報端末)向けのシステムとWeb系システム。開発規模100人月以下の中小規模案件を中心に請け負っている。主な日本の顧客は、野村総合研究所とNECグループ。日本に営業窓口となる事務所を置いている。

愛社精神が総じて強い

 ベトナムの技術者は強い愛社精神を持っている人が多い。そのため、総じて社員の結束力が高い。サン・タオもそうだ。「社内の恒例行事はいつも盛り上がる」(カン氏)という。

 例えばサン・タオのサッカー部は、社員が集まり毎週1回は練習する。社員同氏が頻繁にパーティを開催するほか、社内の運動会もある。多くの技術者が楽しみにしている社内行事が、年に一度の社員旅行。カン氏は「社員旅行の夜は、同僚とビールをたくさん飲む」と笑う。

 ベトナムのソフト技術者の初任給は、2万4000円から3万6000円程度。サン・タオもほぼ同程度とみらえる。ほとんどの技術者は、10万~15万円と初任給5カ月分に相当する額のバイクを購入し、それで通勤している。「ほんの5年前まで、通勤の足といえば自転車だった。それも今ではすっかり様変わりした」と振り返るカン氏。若者の頑張りに支えられ、ベトナムIT産業の発展スピードは、しばらく衰えそうにない。