ベトナムのシステム・インテグレータの草分け的存在が、クァンテックだ(写真1)。1991年の創業で、ベトナム最大の都市ホーチミンに本社を構える。オムロンからATM(現金自動預け払い機)の組み込みソフトの開発を請け負ったほか、NTTドコモの第三世代携帯電話「FOMA」の基地局からリアルタイムにデータを収集するシステムの開発に携わるなど、社会インフラ系システムの経験を持つ。

  現在担当している案件の一つに、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の携帯型ゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」上で動作するeラーニング・システムの開発がある(写真2)。国内中堅ベンダーのプラネットから受注した。プラネットの山本秀幸執行役員は、「システムの構想段階から参加したクァンテックの技術者は、日本では実績が少ないオープンソースの開発ツールなどを積極的に提案してくれた」と満足げに話す。

写真1●クァンテック本社の外観   写真2●ホーチミンにあるクァンテックでPSP向けeラーニング・ソフトの開発に携わる技術者
写真2●ホーチミンにあるクァンテックでPSP向けeラーニング・ソフトの開発に携わる技術者
写真1●クァンテック本社の外観

構想段階からプロジェクトに参加

写真3●東京・代々木にあるインテグレータ「プラネット」の山本秀幸執行役員(右)と、常駐するベトナム人技術者
写真3●東京・代々木にあるインテグレータ「プラネット」の山本秀幸執行役員(右)と、常駐するベトナム人技術者

 プラネットのベトナム技術者の活用方法は、国内のインテグレータ他社のやり方とはやや異なる。通常は基本仕様が決定した案件の詳細設計以降をベトナム企業に委託するのに対し、プラネットは「仕様がまったく何も決まっていない構想段階から、ベトナム人技術者に参加してもらった」(山本執行役員)。

 その狙いは大きく二つ。一つは、日本人とは違った発想の提案を期待したこと。もう一つは、「最新技術を使ったシステム構成を積極的に提案してもらいたかった」(山本執行役員)というものだ。

 とはいえ、ベトナム人技術者に日本の業務知識を求めるのは難しい。そこでプラネットは、業務仕様はそれほど複雑でないがITの面で先進技術を盛り込む必要がある性質の案件を発注しようと考えた。それがPSPを使ったeラーニング・システムの開発というわけだ(写真3)。

 開発中のeラーニング・システムは、プラネットが日本の流通・製造業向けに販売するための新システム。今春の発表を目指している。店頭や製造現場などで、パソコンを使わずにeラーニングを受講できるようにするため、「場所を取らず、動画を鮮明に再生できるPSPに目を付けた」(山本執行役員)。ベトナムでは、少しずつではあるが、技術力に強みを持つインテグレータが増えている。