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高まる検索エンジン・ナショナリズム(後編)--なぜGoogleは「百度」に負けたのか?

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写真1 中国・北京市にある百度の本社ビル。2007年2月撮影
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 米Googleへの対抗馬として,世界的に注目されている中国の検索エンジン「百度」(Baidu,バイドゥ)が今年,日本に拠点を構え,日本語対応のサービスを開始する予定だ(写真1)。中国の検索市場で60%以上のシェアを誇る同社は,世界のトラフィック・ランキングでもGoogleに次いで4位に入っている(米Alexa Internet調べ)。

 百度の海外進出は日本が初めてとなる。既に日本支社の社長として,日本への留学経験がある中国人を北京で採用した。また,東京事務所を設け,従業員を一人雇って日本支社の開設に向けて準備を進めている。

 しかし,日本のポータルサイト・検索エンジン市場は,Yahoo!やGoogleがしっかりと根を下ろしている。いくら勢いのある企業とはいえ,全くの新参者に割り込む余地があるのだろうか。これについて,中国のIT事情に詳しい専門家は次のように見ている。

 「あまり知られていないことだが,中国の検索エンジン市場を先に開拓したのはGoogleだった。そのGoogleを百度が追い抜いて,マーケット・リーダーになったのだ。同じことが,日本でも起きないとは限らない」(野村総合研究所・流通アジアプロジェクト室・特別専門職の肖宇生氏)

 では中国市場で百度はどのようにして,先行するGoogleを追い越したのだろうか。その誕生から今日までの軌跡を辿ってみよう。

米国帰りの検索技術のスペシャリスト,李彦宏氏が創業

 百度は,米国帰りの中国人エンジニア,李彦宏(英語名Robin Li)氏(現会長兼CEO)らが1999年に設立した。

 1968年生まれの李氏は,北京大学在籍中の1989年に天安門事件を目の当たりにし,中国の将来に絶望して米国へ渡る。1994年,ニューヨーク州立大学でコンピュータ・サイエンスの修士号を取得すると米Dow Jones & Companyに入社し,インターネット版Wall Street Journalのシステム開発に従事。この頃からインターネット上の情報検索技術に関心を持ち始め,1996年に彼自身が「link analysis」と呼ぶ,Webサイトのランキング・アルゴリズムを開発した。

 李氏がこの成果を,シリコンバレーの技術コンファレンスで発表すると,これに注目した米Infoseekが彼を技術開発部門の責任者にスカウトした。しかし李氏が同社に移籍する頃には,米Disneyに買収されたInfoseekは検索エンジンの開発に熱意を失っていた。これに失望した李氏は1999年,シリコンバレーのベンチャー・キャピタル2社から120万ドルの出資を受け,中国に戻って仲間と共に百度を設立した。

 2000年に米ベンチャー・キャピタルから1000万ドルの追加資金を調達した百度は,中国のインターネット・ブームに乗って急成長し,2005年8月には米Nasdaqに上場。当日,公開価格27ドルに対して終値が122ドルと,1日で354%も上昇した。

 これは2000年に米国のインターネット・バブルが弾けて以来,最高の上昇率だったので,百度は世界的な注目を浴びることになった。また,この株式公開によって同社の株式時価総額は一時的に40億ドルまで膨れ上がった。巨額の資金を手にした百度は今,中国市場でGoogleやYahoo!と競いながらも足場を固め,日本を手始めに世界進出へと乗り出した。

 以上,李氏と百度のプロフィールは,2006年9月17日付けNew York Times紙からの抜粋である。

 ただ,この中で1点,事実関係が不確かな部分がある。この記事で紹介されたlink analysisだ。link analysisは,Web検索におけるランキング・アルゴリズム全般を指す一般的な呼称だが,この文脈では特に「HITS」(Hyperlink Induced Topic Selection)と呼ばれる特定の技術を指している。詳細な説明は省くが,要するに現在の検索エンジンが採用しているランキング・アルゴリズムの一つである。検索エンジンの世界で,HITSはGoogle創業者のLarry Page氏とSergey Brin氏が考案した「Page Rank」と並ぶ重要アルゴリズムと見なされている。

 New York Timesの記事は,李氏がこのHITSを1996年に開発したと記している。しかしWikipediaによれば,HITSは米IBM Almaden Research Laboratoryの客員研究員Jon Kleinberg氏が開発したという。どちらが正しいのか,あるいは両者の研究が織り交ざってHITSが生まれたのか,正確なところは筆者には分からなかった。

 また,HITSもPage Rankも,あるWebページに張られているリンクの数を元に検索結果の表示順位を決めているが,この基本的アイディアを李氏が思い付いたとする説がある。これについて,野村総研の肖氏は次のように語る。

 「これは私が直接,李氏から聞いた話ではないが,彼は知人に『Googleは私の技術を盗んだ』と語っているそうです。李氏が自らの技術をオーストラリアの講演会で発表した際,聴衆の中にGoogleの2人の創業者がいたとのことです。彼らはその講演会で聞いた李氏のアイディアを使って,Googleの検索技術を開発した。少なくとも,李氏自身はそう思っているようです」

 あくまでも伝聞的なエピソードではあるが,もし本当なら百度とGoogleはまさに宿命のライバルと言えよう。


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 [2007/02/21]





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