東京電力グループで介護事業を営む東電パートナーズ(東京・中央区)は、2007年3月をメドに情報システムのインフラ整備を完了する。同社は2006年1月に東京電力の100%子会社の東電リビングサービスから介護事業を継承して設立。新会社設立に併せて、2006年4月に介護保険料の算出などの機能を備える基幹システムを刷新するとともに、関東地区に42拠点にシンクライアント型のパソコンを合計300台導入してきた。3月までに全拠点へVPN(仮想閉域網)を導入し、インフラ整備が完了となる。システム刷新の狙いは、運用コストの削減と拠点間でノウハウを共有することだ。

 新システムへの移行に伴って、各拠点に導入したのは日本ヒューレット・パッカード製のシンクライアント型パソコン。ハードディスクを搭載せず、ソフトやデータをサーバーに集約することが特徴。アプリケーションを仮想化して動作させるソフトとして、「Citrix Presentation Server」(開発元は米シトリックス・システムズ)を導入した。

 同社は、介護内容といったプライバシーレベルの高い情報を扱っている。しかし、各拠点にはシステムの運用管理を担う専任者はいない。加えて、各拠点に配備していたパソコンのOSのバージョンもまちまちだった。システムトラブルなどの相談に応じるヘルプデスクを本社に設置していたが、電話では原因を把握しにくいケースも少なくなかった。トラブルが解決できない場合には、システム担当者が拠点まで向かわなければならなかった。こうした状況を改善するために、遠隔地でソフト配布や構成管理などを実行できるソフト「Deployment Solution」(開発元は米アルティリス)を導入。本社のシステム担当者が拠点の端末を運用管理できるようになった。

 今回のシステム刷新では、基幹システムも再構築した。これまで各拠点は地域ごとに設置した支社の管理下にあり、それぞれの支社が異なる基幹システムを稼働させていた。3種類の基幹システムが混在していたため、これに合わせて業務手順もバラバラだった。これを1台の基幹システムに統合した。これによって、業務プロセスが同じになるため、本部で各拠点の状況が把握しやすくなる。その一例が、介護サービスの実績管理である。従来、サービスを担当するホームヘルパーは、活動報告書を1~2カ月分まとめて提出していた。新システム導入後は、報告書を1サービスにつき1枚に変更した。

 帳票には、「一緒に料理を作って嬉しそうだった」といったホームヘルパーが感じたメモも記入している。今後は、こうした定性情報を介護計画の立案や、利用者の家族に対する介護説明に役立てる。鮮度の高い情報を活用することで、サービスの質を向上させる。「拠点にたまるノウハウを横展開することでサービスレベルを向上させたい」(志賀祐史・常務取締役)という。