2輪優先をスローガンにパリ市長は、歩道を削って駐輪場や2輪優先路を拡大してきた。4輪の利用者には不評だが、断固として方針を変えないのもドラノエ市長のおもしろさだ。確かに市内を走るバイクや自転車の数は増している。しかし、駐輪している間の盗難は4輪と同じくらい問題だ。自転車はもちろんバイクでさえ部品が消え、骸骨のような姿になって鎖で繋がれているのも見かけるほど。

 だからだろう。ヘルメットを二輪車に残さず持ち歩く若者が多い。背中に丸く膨らんだヘルメット収納袋がつき、人間とヘルメットが一体になった感じの袖無しジャケットから単純なヘルメット袋まで、盗難防止対策のデザインはさまざま。それぞれ色違いの2つのヘルメットを単純な袋に入れ、歩くたびにそれらが背中で踊る二人の姿には若者独特の陽気なリズムがあった。人とヘルメット袋一体のジャケットは機能的なデザインだろうが、異様な姿は見るものを不安にさせる。セキュリティーのためのデザインは単純でも陽気さがただようほうがいい。