写真1●FPT本社
写真1●FPT本社

 「日本の大手ベンダーのオフショア推進担当者で、この会社を知らない人はいない」。NTTデータの基盤システム事業本部で海外発注推進事務局を務める田中誠人部長がこう断言するのが、ベトナム最大手のシステム・インテグレータ、FPTソフトウェアだ(写真1)。同社の06年度(12月期)の売上高は19億8000万円(1ドル=120円換算)。この3年間で8.6倍に伸びた()。倍々ゲームで業績を拡大している。



図●FPTソフトウェアの売上高
図●FPTソフトウェアの売上高

 急成長の要因は、最大の顧客層である日本企業からの受注を増やしていること。日本向け事業は全売上高の50%以上を占める。受託しているシステムは、Javaや.NETなどを使ったWeb系システムの開発、ミドルウエアの開発・テスト、組み込みソフトの開発など多岐にわたる。

 具体的には、日立ソフトウェアエンジニアリングから常時100人規模の開発を請け負うほか、TIS向けに20人強の技術者を確保。NEC やNTTデータ、東芝ソリューションといった大手ベンダーとも取引する。ベンダーだけでなく、通販大手のニッセン、三洋電機といったユーザー企業からも直接受注している。

 FPTソフトの親会社であるFPTコーポレーションのチュオン・ザー・ビン社長兼CEOは、「主要顧客である日本の大手ベンダーやユーザー企業15社前後から、継続して仕事を受けている。各社からの受注量は年々拡大している」と話す。

日本語とITが分かる技術者の育成に乗り出す

写真2●FPT大学の外観
写真2●FPT大学の外観

 日本企業が最重要顧客であるFTPにとって、日本語がわかる技術者の確保は大きな課題だ。日本向け事業を拡大するために、技術者数を現在の1500人強から08年にも5000人にまで拡大する計画を立てている。しかし、「条件に見合う人材はそうはいない」(ビンCEO)。今の教育体制だけだと、2~3年後には間違いなく人材不足に陥ってしまう。

 そこでFPTソフトはこの1月、新たな手を打った。ITと日本語を並行して教える4年生大学「FPT大学」を自ら創立したのである(写真2)。同大学理事長に就いたFPTコーポレーションのチュオン・ザー・ビン社長兼CEO(最高経営責任者)は、「ベトナムでは日本語ができるソフト技術者が圧倒的に不足している。加えて、大学のソフト工学系学部が施している教育内容とビジネスに必要なITスキルには差がある。これらの問題を一挙に解決したい」と、大学設立の狙いを説明する。