ブレードサーバーが売り上げを急速に伸ばしている。ベンダー各社は、ハイエンド向けと下位市場向けの両方に製品ラインアップを拡充して適用範囲の拡大に躍起。中堅・中小企業向け市場の立ち上がりに備えて、間接販売強化に乗り出している。
「当初はデータセンターなどの特定用途向けが中心だったが、ラックマウントサーバーの代替として一般的になった」。日本IBMの田口光一システム製品事業ブランド・マーケティング担当は、ブレードサーバーの需要拡大の状況をこう説明する。実際、ブレードサーバーの国内市場は急拡大している。サーバーベンダー主要8社の2006年度の出荷金額は、2005年度の237億円から37%増加し、324億円に達する見通しだ。
出荷金額1位は、2006年度の売り上げが約90億円の日本IBM。「発売当初からシャーシの互換性を維持していることや、ネットワークやストレージも含めて統合できることが幅広いユーザーに評価された」(田口担当)と言う。2位はItanium2を搭載する上位サーバーが好調で、金額ベースで大幅増の日立製作所。以下、NEC、日本ヒューレット・パッカードが続く。
基幹システム向けに製品を強化
ブレードサーバーは従来、省スペース化と低消費電力、集中管理による運用負荷低減を打ち出し、多数のサーバーを抱える大企業やISP(インターネット・サービス・プロバイダ)、科学技術計算用途でニーズがある研究所などを主要ターゲットに売り上げを伸ばしてきた。商談でもブレードサーバーが数十台、あるいは百台を超えるような大規模システムが中心だった。
こうした既存の領域に加えて現在は、基幹系の大型サーバーの領域にブレードサーバーを適用しようという動きが顕著だ。プロセッサのマルチコア化が進むなど、ブレードサーバー単体の性能向上が加速しており、ベンダー各社は独自のハイエンド製品の投入で差異化を競っている。
例えば日立のBladeSymphonyは、自社開発のブレード間SMP(マルチプロセッサ)技術を採用して最大16コア(デュアルコア×8)のSMPに対応。「ERPや大規模データベースシステムなどで利用されている」(日立の宇賀神敦統合プラットフォーム販売本部販売統括部部長)と言う。
NECは今年2月、ハードディスクを持たず、SAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)ブートと組み合わせて使うブレードサーバーを、データベース統合やストレージ統合といった大規模案件向けに投入した。
少数サーバーのシステムに拡販
その一方でベンダー各社は、ブレードサーバーの台数が一けた台から始められる、比較的小規模なシステム向けの拡販にも乗り出している。急成長しているとはいえ、サーバー市場に占めるブレードサーバーの台数比率はまだ5%程度(IDC Japan調べ)。従来の大企業中心の販売では成長に限界があり、中堅・中小企業への裾野拡大が不可欠だからだ。
そのため各社は、小規模なシステム向けの製品強化を急いでいる。例えば日立は昨年6月、小型高集積モデルのBS320を投入。高さ6Uのシャーシに10枚のブレードを搭載可能で、100ボルト電源にも対応するなど「既存のPCサーバーの置き換えとして導入できる」(宇賀神部長)。
表●国内で販売されている主なブレードサーバーの出荷状況と製品/販売強化策
2006年度は、デルは2007年1月期、サンは2007年6月期、日本HPは2006年10月期、イージェネラと日本IBMは2006年12月期、その他は2007年3月期 |
本記事は日経ソリューションビジネス2007年2月15日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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