◆今回の注目NEWS◆

◎自治体「子会社」、借金16兆円・05年度末(NIKKEI NET、2月7日)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070207AT2D0502406022007.html

【ニュースの概要】全国の地方自治体が50%以上出資して運営する地方公社や第3セクターの債務が、2合計15兆9000億円に上ることが明らかになった(005年度末時点)。総務省のデータを基に日本経済新聞が集計した。


◆このNEWSのツボ◆

 このコラムでも何度か取り上げてきたが、夕張市の財政破綻以降、自治体の財政再建に関する枠組み作りが急速に進んでいるようである。

 2月7日に、自治体の財政指標では示されない公社や第三セクターの借金が16兆円存在するとの報道がされたが、これ以前にも、1月30日には、交付税不足を補うために地方交付税特別会計が行ってきた民間からの借り入れ(総額18兆円)を60年で完済することを立法化するとの方針が示されていた。

◎交付金不足補う「隠れ借金」18兆円、60年で完済・政府方針(NIKKEI NET、1月29日)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070130AT3S2901229012007.html

 また、2月5日には、2008年度から全ての自治体に「実質赤字比率」、「連結実質赤字比率」、「実質公債比率」、「将来負担比率」の四つの指標を公表させ、これらのうち一つでも基準値を超えて、財政悪化が認められる自治体には、財政健全化計画の策定や公認会計士等による外部監査を義務づけるとの方針が総務省から示されている

◎財政悪化時、市町村も外部監査・総務省08年度から(NIKKEI NET、2月5日)
http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt24/20070204AS2C0400504022007.html

 こうした動きは、今通常国会に政府が提出するとされている「地方財政健全化法案(仮称)」の骨格づくりに向けた動きと考えて良いだろう。

 現行の制度では、基本的に「破綻が顕在化」するまで、国を含む上位自治体は、具体的な措置に踏み切れない。このため夕張市のように、身動きがとれない状態になってはじめて、「再建」に着手されることになるが、その時点では、財政悪化の度合いが進みすぎ、再建に伴う痛みが大きすぎる…ということになる(夕張市では、市職員の希望退職を募ったところ、4割もの職員がこれに応募し、市の機能麻痺が懸念される状況となっているとのことである)。

 新しい地方財政健全化の枠組みは、「未然防止」、「早期是正」が重要なキーワードとなっているとのことである。また、第三セクターや公社など、自治体財政外とされてきた部門への目配りも重要なポイントとなっている。

 夕張市の事例を見聞きすると、心が痛む。しかし、夕張市全体が、自ら支えられる以上の行政サービスを長期間にわたって受けてきたことも事実である。今後は、こうした「手遅れ」の事態を招かないよう、自治体の財政状況を透明に、かつ、公正に示すような指標づくりと評価の仕組みを一刻も早く構築することが望まれる。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。