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ITpro

システムの“運用”にもっと光を

2007/02/09
吉田 琢也=ITpro

 先日,ITproが今春に計画しているサイト・リニューアル(読者の皆様には近く正式に発表させていただく予定です)に関連し,企業情報システムを中心とする「エンタープライズ」分野の“最近の動向”について話す機会があった。

 なにぶん与えられた時間が短かったので,筆者が担当しているエンタープライズ関連サイトで過去1年に発信してきた情報のうち,特に大きな話題になったトピックや,今年以降も引き続き注目すべき重要なトピックを選んで話をさせていただくことにした。筆者が選んだトピックを挙げると,「内部統制」「東証システム問題」「大手企業の“攻め”の大型IT投資」「SaaS(Software as a Service)に象徴される,ソフトのオンデマンド化」「仮想化」そして「IT人材のスキル標準」となる。

 こうして列挙してみて,「システムの運用」(正確には,運用のマネジメント)がいかに重要性を増しているか,ということに筆者は改めて気づかされた。

 もちろん,システムの運用が大事だということは以前から言われ続けていることであり,何を今さらと思う読者もいるかもしれない。しかし,新規の“開発案件”として語られることが多い「大型IT投資」の話題を除き,これらの重大トピックがことごとく,システムの運用と密接にかかわっていることに,筆者は少々驚くと同時に,IT系メディアがこれから腰を据えて報じていくべきテーマの方向性が見えたように感じたのである。

 “日本版SOX法”に基づいて,上場企業に財務報告の適正性確保を求める「内部統制」では,システムの運用がいかに的確にマネジメントされているかが厳しく問われる。全銘柄の売買停止を招いた東京証券取引所の大規模システム障害や,それを踏まえた東証の売買系システムの全面刷新計画では,処理性能や信頼性といった,システム運用に関する厳しい要件にどう応えていくかが焦点であり続けた。

 一方,従来のASPサービスが抱えていた運用面(コスト・パフォーマンスや信頼性など)の制約を解消しつつ,高度な業務アプリケーションを“サービス”として利用できるようにする「SaaS」や,システム運用コスト削減のカギとなるサーバー統合を実現しやすくする「仮想化」技術は,システムの構築から運用までのプロセス全体に大きな影響を及ぼす。

 このように,システムの構築だけでなく運用まで含めたマネジメントの重要性が高まっていることを象徴しているのが,実は最後のトピックとして挙げた「IT人材のスキル標準」である。情報処理推進機構(IPA)は昨年4月,ITエンジニアの職種やスキルを体系化した「ITスキル標準」を2002年の登場以来初めてバージョンアップし,昨年10月にさらに改良を加えた。このとき公開された「ITSSバージョン2 2006」で,これまで「オペレーション」と呼んでいた職種を「ITサービスマネジメント」に変更したのである。

 それによると,「ITサービスマネジメント」という職種は,「システム運用関連技術を活用し,サービスレベルの設計を行い,顧客と合意されたサービスレベルアグリーメント(SLA)に基づき,システム運用リスク管理の側面からシステム全体の安定稼動に責任を持つ」人材であると定義されている。システム運用管理のベストプラクティス集である「ITIL」を強く意識した内容である。

 筆者はこれまで,万単位のエンジニアを対象とする,ITスキル標準に基づいたスキル調査に何度か携わった経験があるが,「オペレーション」は他の職種に比べて,スキルレベルや年収など多くの面で見劣りする,という結果を見てきた。しかし,オペレーション(=システムを操作する者)ではなく,上記のように定義された「ITサービスマネジメント」の人材には,非常に高度なスキルと経験が求められることは言うまでもない。当然,今後の調査結果にも変化が表れるだろう。

 本稿にはあえて単純なタイトルを付けたが,「システムの構築だけでなく運用まで含めたマネジメント,ということを常に意識しながらエンタープライズ分野の動向をウォッチしていきたい」というのが,ITproのリニューアルを控えた現在の筆者の気持ちである。

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