緊急時とは

 通常でない事が起こった時のこと。つまり、通常業務を定義していないと緊急時も定義できない。企業がWebを運用するにあたって、常日頃から心がけていなければならないことは山ほどあるが、運用に関しても基本的なサービスレベルをサイトのオーナーと確認しておく必要がある。

 サイトのオーナーとはそのサイトの責任者(部署)であり、場合によっては経営者そのものがオーナーとなる場合もある。これは、企業によっても異なるが、そこをはっきりさせておく必要がある。サイトの運用担当部署(運用を委託されている部署)は、サイトオーナーに対しどのようなサービスレベルを提供するのか。

 セキュリティーや個人情報などに関係する事故が発生した場合。
 システムに関してなんらかのトラブルが発生した場合。
 コンテンツに関してなんらかの対応の必要性が発生した場合。

 その他種々のケースが想定される。

 たとえば、運用対応可能な時間帯。(ここでいう運用対応とは、サイトに対しなんらかの作業をおこなうことを意味する)

 会社の営業時間帯のみ?
 夜間、休日、連休はどうするのか
 更には、地震、災害等を受けた時はどうするのか
 コンテンツのリリース後、間違いに気づいたら
 重要な案件が発生したら(どのようなものを重要案件とするか定義する必要もある)
 システムのメンテナンス時にサイトをどの程度ストップしていいのか
 サーバーの稼働率はどの程度まで保証するのか
 個人情報、セキュリティーに関するトラブルが発生した場合どうするのか

などなど、例をあげたらきりがない。

 しかし、通常はどのレベルで運用を保証するのかを、オーナーと共有しておかないと、底なし沼同様、時間もお金も際限なくかかってしまうことになる。未だこのような、通常業務のサービスレベルを確認されていないのであれば、早急に確認されることをお勧めする。

何をどこまで

 企業サイトといっても多種多様であり、一般的な企業情報を扱っているものから、製品・サービスの販売、各種登録、SNS、その他各種ネット関連ビジネスなど様々である。運用対応時間もこれらサイトの目的によっても大きく違う。これは、リアルなビジネス現場と同じで、サイトも同様に多様化してきたということだろう。

 対応時間が24時間365日対応と平日(月~金、8時間/日)対応のみとでは、その運用費用を見積ると簡単に分かるが、明らかに大きな違いがある。したがって、この両者の間に位置する対応度合いの程度(サービスレベル)によって千差万別のコストが発生するのである。

緊急時対応

 通常時のサービスレベルが定義されたところで、緊急時の対応体制をどうするのかという課題が発生し、その対策や費用が導かれる。

 いくつか考えられる例をあげると、

災害時:地震や台風などの自然災害が発生しサーバーが機能停止した場合も、継続的にサービスを続けるのかどうか、つまり、別の場所の同機能の退避サーバーに切り替えればサービスは継続できるが、常日頃からその退避サイトの運用管理費用も発生する。また、人的に被害を被った場合、現場で運用を担当する人材をどう確保するのか、、、。それ以前に災害の影響が長期化した場合、会社の業務自体をどうするのかも平常時から検討されていなければならない。

攻撃時:テロや悪意ある第三者にサイトが攻撃された場合も同様の事が考えられる。この種の攻撃は、夜間、早朝、長期連休中など一般的に通常業務時間以外に発生する場合が多い。この種の攻撃に迅速に対応するためには、恒常的な監視と異常が発生した時の対処や連絡体制の常日頃からの整備が必要となる。24時間監視体制を実施するにあたってもそれだけでコストは発生する。通常のコーポレートサイトの場合、このような緊急時は迅速にリカバリーできるように最善を尽くすというのが一般的のようだ。最近の例を見ていても、コマースサイトなどは当然であるが、企業のコーポレートでもかなり短時間に対策対応が完了しているように見受けられる。それだけ、サイトの影響力が理解され、それなりのコストをかけるようになってきたということだろう。

その他:その他、通常サービスレベル外の案件が発生した場合。例えば時間外にコンテンツ中の漢字の間違いに気づき修正を求められた場合など。対応するのかしないのか、サイトのサービスレベルをどう定義しているかによって異なる。なんだかお固い役所みたいな感じに受け取られやすいが、企業が活動する上でどのような考え方で線を引くのか、ということは非常に重要なポイントであると思う。それによって、発生する費用も変わるし、従事する社員の評価も変わってしまう可能性がある。

 このように、通常時のサービスレベルとは何か、また、緊急時はどうするのかということをできるだけ具体的に整理しておくことが、結果的に通常時の効率的な安定運用につながるはずである。