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NTTレゾナントが運営する大手ポータル・サイトの「goo」。2001年にGoogleと提携し,事業の核をきめ細かな検索サービスや支援アプリケーションの開発にシフトした。2007年1月には,NTTの研究部門発のWeb履歴閲覧・検索ソフト「gooメモリ・リトリーバβ」を実験サービス用サイトの「gooラボ」で公開。サーバーだけでなくクライアントでも攻勢をかける。goo担当者に,gooメモリ・リトリーバ公開の経緯と今後の展開を聞いた。(聞き手は高橋 秀和=日経コミュニケーション

ユーザーの操作履歴を見て「役立った」ページを判別する「gooメモリ・リトリーバ」誕生の経緯を聞きたい。

 NTTの研究部門が開発していたソフトを目にしたのが発端だ。NTTグループでは,研究部門の成果を披露する技術見学会が定期的に開かれている。そこでgooメモリ・リトリーバの原型を目にして,Webを検索・閲覧するユーザーが忘れかけた記憶を引き出すツールとして有用なのではないかと思い飛びついた。

 もちろん研究所で開発していたソフトは,「ユーザーの操作履歴を事細かに記録し,それをどう検索に役立てるか」という視点で作られたシンプルなもの。そのままストレートにgooラボで公開するのではなく,一部のユーザーのフィードバックを得てから「ベータ版」という形で披露した。

ベータ版として公開する際に手を加えた部分はどこか。

 実際に記録する操作履歴の範囲だ。「操作履歴を記録する」という行為がユーザーの反発を招かないかどうか,慎重に検討した。

 例えば公開中のgooメモリ・リトリーバでは,キーボードやマウスを「動かした」という情報を,ユーザーにとってそのWebページが有用だったかどうかの指標の一つとして利用している。操作の履歴を取ろうと思うといくらでも取れるが,入力した文字列,マウス操作の流れといったレベルのログは記録していない。研究目的の段階では,こうした配慮は入っていなかった。

操作履歴を検索に活用するという特徴に対するユーザーの反応は。

 反発が起こることも想定していたが,ネガティブな反応は思いのほか少なかった。gooメモリ・リトリーバを実際に使ってみて「こういった可能性は?」という提案を寄せてくるようなポジティブな反応が多い。ダウンロード数についてもgooラボのアクセス・ランキング上位に入るほどの人気だ。

 プライバシー保護への配慮をアピールした効果もあるだろうが,gooのブランド・イメージに助けられた部分はある。ジョーク・フラッシュ「EPIC 2014」に登場して話題を呼んだ架空の検索エンジン「EPIC」(趣味や属性,購買履歴を基に情報を選別する)が現実味を持ってネットで語られているという空気の存在も背景にあるのだろう。

Googleデスクトップはインデックスを米グーグルのサーバーに格納するサービスも提供している。Webの閲覧履歴は,メールや文書ファイルなどと並んで重要なデータになりつつあるからではないか。gooもサーバーでgooメモリ・リトリーバのインデックスを預かるサービスを展開しないのか。

 gooメモリ・リトリーバのインデックスをgooで預かるのは容量やプライバシの面で難しいと考えている。

 ただ現在もメールやブログなど,ユーザーのデータの一部を預かっている。我々から見れば,“一見”のユーザーと“常連”ユーザーとの違いはこの点にある。ストレージ系のサービスについては,今後何らかの形で拡張する計画だ。

携帯電話向けメモリ・リトリーバの可能性は。

 携帯電話でも同様のサービスは検討中だが,操作履歴やWebページのキャッシュをローカルに保存するとなると,リソースの面で敷居が高い。ただWeb検索を支援する機能は携帯電話にとっても必要だ。何らかの形で携帯電話との連携を図りたい。

 もっとも携帯電話でのブラウジングは,調べ物など何か目的あってWebアクセスするケースが多い。漫然と見た履歴を思い出す,というコンセプトのターゲットからは外れる部分もある。

今後gooラボで提供する予定のサービスについて聞きたい。

 ブログを横断検索・分析して評判やイメージ・ワードを提示する「オピニオンReader for 映画」のように,分析系のサービスの追加を検討中だ。gooが持つ自然言語処理の技術を活用する。

 gooメモリ・リトリーバについては,2007年6月30日までベータ版を提供してユーザーの声を集める。正式版の提供は未定だが,例えばブログの投稿を支援するツールと組み合わせるとった形態が考えられる。単体のソフトとしての価値を認められれば有償での提供もあり得る。