Googleが提供する「パーソナライズド検索」は、Googleアカウントを所有するユーザーがそのアカウントでログインして行った過去の検索履歴に基づいて検索結果を最適なものに並べ替えることができ、より関連性の高い検索結果が表示される機能だ。

 もちろんこの機能だけでも便利なのだが、このサービスのもうひとつの機能として、過去にユーザー自身が検索した月別、曜日別、時間帯別の検索行動の統計データを参照できるという機能がある。

 試しに筆者の統計データを見てみると、曜日では火曜日、時間帯は22時台の検索回数が圧倒的に多いという結果だった。このデータを見て、自身の行動を振り返ってみれば、私は火曜日に早めに帰宅することが多く、22時台はテレビを観ながら検索することが多いということに思い当たった。

 これまでは特定の曜日、時間帯に偏って検索しているという意識は自分自身でもなかったのだが、私の検索パターンはある程度決まっているということなのだろう。

 インターネット広告は、アクセスログ解析によって、ユーザーがいつ、どんなキーワードで検索してサイトに来訪したのかを知ることができる。しかし、来訪者がどのような属性(年齢、性別など)であるのかまではわからない。つまり、コンバージョン率が低い要因として、ターゲットでない人ばかりが来訪している可能性も考えられるのだが、アクセスログ解析だけでは、さすがにそれを立証する方法はない。

 そこで、前述の統計データを利用すれば、ターゲット層の検索パターンの分析ができるのではないかと筆者は考える。例えば、ターゲットとなる属性の人たちをモニターとして、一定期間パーソナライズド検索を有効にした状態でインターネットを利用し、検索履歴の統計データを提供してもらう。これで、ターゲットの検索行動パターンを知ることができるのではないだろうか。

 ただし、統計データは、ユーザーが多く検索したキーワード、来訪したサイトなどを知ることができるものの、モニター調査では、検索キーワードや来訪サイトの本音を知ることは難しい。

 なぜなら、自身の検索履歴を見ていただければご理解いただけると思うが、検索キーワード、来訪サイトの履歴は非常に個人的な情報であり、人に知られたくない場合が多いからだ。実際、つい最近、米国ではポータルサイトを運営するAOLが、ユーザーの承諾無しに検索データを不用意に公開してしまったため大きな非難を浴び、役員が解雇されるという事態にまで至っている。

 こうしたケースと異なり、当然モニターとなってもらうためには本人の承諾が前提となるのだが、検索キーワードや来訪サイトまで企業がモニタリングしたいとなると、モニター候補者の承諾を得ることが困難になる点や、履歴の公開を意識してしまい、検索行動そのものを制限してしまう可能性があるので、調査対象は曜日、時間帯のみとした方が現実的だろう。

 テレビCMでは、ターゲット層の視聴率が高い番組、曜日、時間帯などによって出稿のタイミングが決定される。当然、ターゲットの行動パターンに合わせた広告出稿が効果的であるのは、インターネット広告においても同様と言える。

 そこでGoogleの検索履歴の統計データを活用して、ターゲット層の検索パターンに合わせた広告出稿を行なってみるというのも、ひとつの試みとしておもしろいのではないだろうか。

(アウンコンサルティング AMグループ 藤田奈々)





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