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真髄を語る

イノベーションを阻害するもの

北城恪太郎 経済同友会代表幹事

2007/02/06 ITpro

 「日本が抱えている数々の問題を解決するには、国、企業、個人、すべての領域でイノベーションを進めるしかない」

 ここでいうイノベーションとは、創造力を発揮して過去の延長線上にはない、新しい何かを生み出すことを指す。業界の常識を変えてしまう新商品の投入、他国や他社がそう簡単には追随できない画期的な新サービスの実現、社会の仕組みを一変する新施策、これらがわたしのいうイノベーションである。

 イノベーションには、技術革新が含まれるが、それだけにとどまるものではない。また、日本のお家芸である「カイゼン」とも異なる。何を作ったらよいかを正確に理解し、確実にそれを作り上げ、改善改良を続けて品質を高めていく。こうしたカイゼンは今後も重要である。ただし、何をするか、何を作るかを自ら考え、前例がなくても思い切って取り組む、イノベーションもまた必要なのである。

 経済同友会の代表幹事として、さまざまな場所で講演をしたり、意見を述べる機会が多いが、わたしは冒頭のように主張し続けている。このほど同友会は、「日本のイノベーション戦略~トップがコミットし、自ら実行すべし~」という報告書を公表した。同友会の「日本のイノベーション戦略委員会」が議論してきた、イノベーションのための戦略やアクションについてまとめたものである。

 本稿においては、推進策ではなく、逆に「イノベーションを阻害するもの」について、私見を述べる。

日本が縮む危険性

 日本の抱えている課題を詳細に論じることはしないが、その大きさを確認するために、ごく簡単に触れておく。ひと言でまとめれば「巨額の借金を抱えたまま、日本が縮んでしまいかねない」となろう。今や日本の財政赤字は780兆円に達し、GDP(国民総生産)のざっと160%になっている。このまま推移すると、財政赤字は2012年には、1000兆円、GDPの二倍にまで膨れ上がると試算されている。先進国でこれほど巨額の財政赤字を抱えた国は日本だけである。

 日本は、この借金を次の世代に委ねようとしている。しかし、出生率が低下しており、日本の人口が増える見込みは今のところない。これまた試算ではあるが、「百年後の2100年には、日本の人口は6400万人程度になる」というデータもある。出生率の低下と、高齢化社会の到来は、社会保障費の増大につながり、これも看過できない。

 一方、借金を返すために欠かせない、付加価値を創造する力はどうなっているだろうか。生産性の各種指標を見ると、日本は、一部の製造業を除けば、決して高くはない。またスイスのIMDが毎年発表する競争力ランキングの2005年版によれば、日本の競争力は21位であった。項目別に見ると、日本は特許の獲得で1位、研究開発費の支出と顧客満足度の追求では2位となっているが、株主価値重視や起業家精神は調査対象国の中でほぼ最下位になっている。

日本企業はもっと力がある

 ただし、日本企業は創造力と競争力に関して、まだまだ潜在能力があるとわたしは思っている。危機感を抱いた経営者がイノベーションを進めると宣言し、優秀な社員がそれに応え、世界で一番品質に厳しい日本市場で通用する製品やサービスを作っていくことができれば、世界市場においても、日本企業は競争力を維持できるに違いない。

 しかし、それには大前提がある。日本企業を支える社会基盤のイノベーションも同時に進むことである。社会基盤とは、細かく言えば、税制、物価、人件費といったコストから、社会慣行、教育制度、国民性まで、日本に本社を置く企業が避けて通れない事柄である。社会基盤という言葉を持ち出さなくても、「日本社会」と言えばよいかもしれない。

 本来、社会基盤は、その上で活動する企業の発展を支援するものである。民間の活力を引き出せるように規制を緩和し、優秀な人材を輩出する仕組みを用意すべきである。ところが、日本の場合、社会基盤が企業改革の「制約」になってしまっている。わたしは、日本の企業は本当によく努力していると思う。綿密に比較したわけではないが、日本社会が日本企業に課している制約は世界一厳しいのではないかと思う時がある。それだけの手かせ足かせをはめられながら、日本企業は頑張っている。日本企業の潜在能力は高いというゆえんである。

「日本は共産主義」

 先般、中国の要人と会談したとき、「中国では競争が厳しく、学生が勉強しすぎて体をこわすのが問題だ」と言われたので、「中国で広がっている経済格差が社会問題になる危険はないのか」と問うてみた。すると「格差があるからこそ、企業も学生も必死で努力する。日本のような共産主義国になってしまったら活力を失う」と切り返された。

 言うまでもなく中国は共産党が政権を握っている。しかし企業の活動を見ると、日本以上に激しい競争社会という一面を持つ。実際、中国の企業人の多くが、経済活動については、共産主義と言っていない。

 確かに、日本のほうがよほど共産主義的ではないか、と思う点が幾つかある。わたしが指摘したい日本の社会基盤の問題は、大きく二点に集約できる。一つは高コストであること、もう一つは閉鎖的であることである。後者は、「世界で仲間をつくることが苦手」と言い換えてもよい。

 高コストの公的セクターが肥大している。さまざまな活動についてきちんと評価せず、成果を挙げた人も挙げなかった人も、「平等に」処遇する。自らの独自性にこだわり過ぎ、他国となかなかうまくコミュニケーションができない。こう見てくると、これは確かに、一種の「共産主義」かもしれない。念のため書いておくと、ここでいう共産主義は、現実の政治体制のことではない。また日本を弱肉強食の競争社会にせよ、というつもりもない。

 民営化を通じて、公的セクターを改革する。リスクをとって挑戦し成果を上げた人に報いるようにし、海外諸国と、競争と協調の関係を築く。これが日本の社会基盤の改革、日本社会のイノベーションと考える。このイノベーションに取り組まず、高コストでしかも、閉鎖的な社会を温存してしまったらどうなるか。「日本は魅力的な国ではない」という評価を海外から受け、さらに孤立が深まっていきかねない。

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