◆今回の注目NEWS◆

◎「債務調整等に関する調査研究会」の開催(総務省、1月25日)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/070125_5.html
◎「債務調整等に関する調査研究会」第1回(総務省、1月26日)
http://www.soumu.go.jp/menu_03/shingi_kenkyu/kenkyu/
saimu_chousei/070126_1.html

【ニュースの概要】総務省は、有識者による「債務調整等に関する調査研究会」を設置した。座長は宮脇淳北大教授が務める。1月26日に第1回会合が開かれた。


◆このNEWSのツボ◆

 現在のところ債務免除が認められていない自治体などの債務に関して、総務省が検討を開始する。

 こうした動きは、昨年の夕張市の財政破綻で顕在化した自治体の危機的な財政状況を背景にしていると考えられる。実際、夕張市に近い状況に陥っている自治体は少なくないはずであり、現実的な解決策として債務免除の仕組みを考えておくことは、「緊急の備え」として、妥当な選択肢であろう。これは、民間企業の場合も、民事再生とか会社更正などの様々な仕組みが存在することと同じである。

 こうしたドタバタの引き金となった夕張市の現状を見ると、やはり「自治体(=夕張市)の自助努力」のみでは、再建は容易ではないようで、再建策の住民負担を軽減しつつ、国や道による支援策の強化が検討されている。

◎夕張市に低利融資、道が自ら再建後押し(NIKKEI NET、1月19日)
http://www.nikkei.co.jp/news/retto/20070119c3c1901419.html
◎夕張市、再建期間短縮へ・国と道が財政支援(NIKKEI NET、1月25日)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070125AT3S2401V24012007.html

 夕張市の財政再建計画が最初に公表された際には、ここまで借金を積み上げた行政や地方議会に対して批判の声が噴出するとともに、地元住民にスポットを当てた「我々に出て行けというのか!!」的なエモーショナルな報道が相次いだ。その結果として財政再建策の緩和と国や道による支援が検討されているわけである。しかし、酷な言い方をすれば、夕張市の住民サービスが借金によって行われていたことは否定できないし、住民が、自分達で支えられる以上のサービスを受けていたことも事実であろう。

 実際には、夕張市のように「破綻」とまではいかなくとも、綱渡りを続けており、破綻の恐怖に怯える自治体も相当な数が存在するはずである。だが、こうした自治体に対して、なし崩し的に、国や上位自治体(都道府県)による救済が行われていっては、結局、始末を付ける財源の出し手が変わるだけで、救済を受けるために政治的な陳情や駆け引きといったパワーゲームが繰り返されるという状況は変わらないだろう。

 だとすれば、今、必要なのは、現実を客観的に認識し、併せて、民間における民事再生や会社更正のような、できるだけ客観的で公正なフレームワークを準備しておくことではないだろうか。その中には、手続きの進め方についてのフレームワークと併せて、「目安」となる住民の厚生水準(シビルミニマムと言っても良いかも知れない)や、議会や行政の責任のあり方についても含まれて良い。

 宗文州氏も言っておられるが、「赤信号、皆で渡れば怖くない」といった感じのある現状を、いかに変えていくか…が、今求められる最大かつ喫緊の課題ではないだろうか。

◎「皆で渡れば・・・」――夕張の財政破綻では終わらない「集団的無責任」 (NIKKEI NET、2006年6月26日)
http://it.nikkei.co.jp/business/column/sou_tanto.aspx?n=MMITzv000023062006

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。