レイヤー3スイッチとルーターはどう違うの?

(イラスト・アニメーション:岸本ムサシ)

  今回の回答者:
那須野 洋一
富士通 ネットワークサービス事業本部
担当部長

坂本 誠
富士通 プロダクトビジネス企画本部
事業開発室プロジェクト課長

 大型の製品では,いまやレイヤー3(L3)スイッチとルーターにはほとんど差がありません。同じような製品をメーカーによって「L3スイッチ」と呼んだり「ルーター」と呼んだりしています。ただ,元々は別の製品でした。

 L3スイッチは組織内でサブネットの異なるネットワーク同士をつなぐために生まれました。それまで企業や大学で使われていたL2スイッチでは,サブネットが異なるネットワークを接続できません。そこで,組織内の利用を想定し,L2スイッチの技術を使いながら,限られた数のコンピュータ間の高速通信を実現したのがL3スイッチです。また,対応するプロトコルはIPのみで,インタフェースはイーサネットしか備えませんでした。

 これに対してルーターは,さまざまなプロトコルを扱う環境や,巨大なインターネットで使うことを想定して発展してきました。何万台ものコンピュータの通信を処理するため,多数のアドレスを識別して大量のパケットを転送しなければなりません。そのため,L3スイッチにはない高価なアドレス識別用のチップを搭載しました。また,さまざまな回線をつなぎ込むために多くの種類の回線インタフェースや,マルチプロトコルに対応してきました。

 しかし,L3スイッチとルーターは,進歩の過程で,互いに歩み寄るように似てきました。例えば,アドレス識別用のチップが安くなると,L3スイッチも搭載するようになり,L3スイッチの処理能力が上がりました。一方でルーターは,世の中の流れに合わせ,対応するインタフェースやプロトコルの種類を減らし,今ではIPとイーサネットだけに対応した機器も多々あります。

 極めて負荷が高い環境などで使うと,L3スイッチとルーターにはまだ性能差が出ることがあります。でも,ほとんど差はなくなったと言えますね。