NGNでのIPパケットのルーティングは,従来のインターネットと技術的な違いはありません。その一方,通信サービスを見ると,NGNには特徴的な点があります。商用サービス向けにIPマルチキャストを本格導入することです。
IPの通信方式には,ユニキャストとマルチキャストの2種類があります。
ユニキャストは,コンピュータ同士が1対1でIPパケットをやりとりする通信方式です。Webやメールなど,インターネット上の主要な通信アプリケーションのほとんどはユニキャストを利用します。IP電話も,このユニキャストを使います。ユニキャストで複数の相手にIPパケットを送る場合,相手の台数だけIPパケットを用意しなければなりません。このため,サーバーに大きな負荷がかかります(図12)。
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パケットを必要に応じてコピー
マルチキャストは,1台のコンピュータから,複数のコンピュータに向けて,同じIPパケットを同時に届ける通信方式です。一度に複数の端末にデータを送る放送型の映像配信に向いています。
マルチキャストでは,IPパケットを配送するツリー状の経路(配送ツリー)を構成します。その配送ツリーの最上位に位置し,配送の起点となるルーターは「ランデブー・ポイント」と呼ばれます。配信サーバーは1個のマルチキャスト・パケットをランデブー・ポイントに送ると,あとは配送ツリーに沿って転送されていきます。パケットは途中のルーターが必要な分だけコピーしていきます。
現在のマルチキャストの技術では,複数のNGNにまたがったマルチキャストは難しいようです。NTTのフィールド・トライアルでも,NGN同士をつなぐNNIではマルチキャスト・パケットは通しません。当面,同じ映像を複数のNGNにマルチキャストで配信したい場合,NGNごとに配信サーバーを置かなければならないでしょう。
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