はじめまして,トゥワイズ・ラボの山居と申します。私は15年以上,SNMPを中心としたネットワーク管理ソフトウエアの開発に携わっています。市販製品の開発だけでなく,「TWSNMPマネージャ」というWindows用SNMPマネージャを1999年からフリーソフトとして公開しており,そちらで名前を知っている人もいらっしゃるのではないでしょうか。最近では,本連載で解説予定のsFlowとNetFlowに対応した「TwFMon」(フローモニタ)というソフトをシェアウエアとして提供したりもしています。これらのソフトは,弊社のWebページからダウンロードできるので,興味のある人はのぞいてみてください。

 さて,唐突ですが一つ質問させてください。ネットワークを運用するうえで最も重要なことはいったい何でしょうか。それは,ネットワークを決してダウンさせずに快適に使い続けられるように「きちんと管理すること」です。ただ,ネットワークの規模や形態,回線の種類などがさまざまあるように,ネットワーク管理とひと口に言っても,実際にはさまざまなカテゴリがあります。大まかに分類すると,

・構成管理
サーバーやクライアント,それらを結ぶルーターやハブなどのネットワーク機器の配置,配線の管理,通信のためのルート設定などの管理

・障害管理
サーバーやネットワーク機器の死活監視,回線の状態監視など

・アカウント/セキュリティ管理
サーバーやネットワーク機器のアカウント管理,通信のセキュリティ設定の管理など

・パフォーマンス管理
サーバーやルーター,回線の負荷管理

などが中心になるでしょう。しかし,これらに加えて実はもう一つ重要な管理があります。それは,ネットワーク上でどのノードからどのノードへ,どのような種類のパケットがどのくらい流れているのかを把握するという「トラフィックの管理」です。トラフィックをきちんと管理できないとネットワーク全体のパフォーマンスが低下したり,思わぬトラブルに巻き込まれる危険があります。にもかかわらず,トラフィックの管理をしている管理者は少ないのが現状です。

 そこでこの連載では,主にネットワーク管理者や管理システムの開発者を対象に,ネットワーク管理の重要な要素の一つであるネットワーク・トラフィックをモニターする技術について全5部構成で解説する予定です。今回は,第1部の第1章として,まずはトラフィック管理技術の全体像をつかんでもらいます。ネットワークを流れる情報にはどんなものがあり,それらをどのような技術でモニターできるのか,各技術の長所や短所を比較しながら紹介していきます。