「1万人調査で分かったITエンジニアの実像」の第4回目では,ITエンジニアのキャリア・デザインに関する意識を探っていく。なるべく読者の皆さんに身近に感じていただけるよう,年齢層別に分析する。自分自身の将来のキャリア・デザインを考えながら読んでいただけたら幸いだ。

 プロジェクト・マネジャーやコンサルタント,ITアーキテクト,ITスペシャリスト・・・。これまで職種分類があいまいだったIT業界でも,徐々に専門職種が確立されつつあるが,自分は将来どんな職種を目指すべきだろうと悩んでいる,あるいは迷っているITエンジニアも多いことだろう。

 そこで,「1万人調査で分かったITエンジニアの実像」の第4回目では,ITエンジニアのキャリア・デザインに関する意識を探っていく。なるべく読者の皆さんに身近に感じていただけるよう,年齢層別に分析する。自分自身の将来のキャリア・デザインを考えながら読んでいただけたら幸いだ。

コンサルタントは45歳以下で5%未満の“狭き門”

 まずは,図1を見ていただきたい。

図1●年齢層ごとに見た職種構成(単位は%,カッコ内は回答者数)
図1●年齢層ごとに見た職種構成(単位は%,カッコ内は回答者数)
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 この図は,25歳以下,26~30歳,31~35歳,36~40歳,41~45歳,46歳以上という年齢層別に,現在職種の内訳を表したものである。

 入社して間もない25歳以下では,43.5%のエンジニアが「アプリケーションスペシャリスト」と答えている。また,8.8%が「ITスペシャリスト」,19.0%が「ソフトウェアデベロップメント」と答えた。これら3つの“開発系3職種”の割合をすべて合わせると,71.3%と7割を超える。

 開発系3職種のうち,アプリケーションスペシャリストの割合は,26~30歳で42.0%,31~35歳で36.0%,36~40歳で34%,41~45歳で25.4%,46歳以上で17.4%と,年齢が高くなるにつれて低くなる。ソフトウェアデベロップメントの割合も,26~30歳で11.6%,31~35歳で8.0%,36~40歳で5.6%,41~45歳で5.1%,46歳以上で1.5%と年齢が高くなるにつれて急激に減少する。

 アプリケーションスペシャリストとソフトウェアデベロップメントの割合が年齢とともに減少する主な原因は,年齢が上がるに従って,プロジェクト・マネジャーになるエンジニアが増えるためだろう。実際,「プロジェクトマネジメント」の割合は,中堅の31~35歳で18.8%と2割に近づき,脂が乗り切る36~40歳では26.0%,ベテランの41~45歳と46歳以上ではそれぞれ35.2%,36.3%と3割を超える。

 年齢が上がるに従って割合が減少するアプリケーションスペシャリストとソフトウェアデベロップメントと異なり,ITスペシャリストは,25歳以下の8.8%が26~30歳で15.3%に増え,40歳までは年齢によらずほぼ15%の割合。26歳~30歳で割合が急増するのは,それだけ経験が必要になるためだろう。また,40歳まで年齢によらずほぼ割合が変わらないのは,職種転換せずに年齢とともに自らの専門スキルを深めていくITスペシャリストが多いためと考えられる。41歳以降は減少に転じるが,これは,ベテランになるとプロジェクトマネジメントやコンサルタントに職種転換するエンジニアが増えるためだろう。

 では,最近重要性が高く叫ばれている「ITアーキテクト」はどうだろうか。調査の結果は,25歳以下で2.9%,26~30歳で4.4%,31~35歳と36~40歳で4.2%.41~45歳で4.3%,46歳以上で3.4%。この割合は,非常に低いと言える。ITアーキテクトは,情報システム開発における技術系の総責任者であり,プロジェクト・マネジャーと並んで極めて重要な職種である。IT業界を挙げて,ITアーキテクトをもっと増やす努力が必要だ。

 なお,コンサルタントについては,25歳以下で2.1%,26~30歳で1.7%,31~35歳で3.0%,36~40歳で2.9%.41~45歳で4.1%という結果になった。46歳以上で8.1%に増えるが,全体的には“狭き門”。それだけ,豊富な経験と高いスキルが必要と言うことだろう。

全年齢にわたって人気が高いコンサルとプロマネ

 次に図2を見ていただきたい。

図2●年齢層ごとに見た「将来希望する職種」の構成比(単位は%,カッコ内は回答者数)
図2●年齢層ごとに見た「将来希望する職種」の構成比(単位は%,カッコ内は回答者数)
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 この図は,将来希望する職種を年齢層ごとに見たものである。全年齢にわたって人気が高いのが,コンサルタントとプロジェクトマネジメントの2職種だ。

 将来コンサルタントを希望している割合は,25歳以下で13.4%,26~30歳で13.8%,31~35歳で14.1%,36~40歳で14.7%.41~45歳で18.5%,46歳以上では20.2%。これは現在職種がコンサルタントと回答した割合よりもはるかに高い。文字通りの人気職種である。

 またプロジェクトマネジメントを希望している割合は,25歳以下で30.0%,26~30歳で27.8%,31~35歳で29.4%,36~40歳で31.5%。この数字も,現在職種がプロジェクトマネジメントと回答した割合より高い。ただし41歳以上では,将来プロジェクトマネジメントを希望している割合が,現在職種がプロジェクトマネジメントと回答した割合を下回る。これくらいの年齢になると,プロジェクトマネジメントとしてのこれまでの豊富な経験を,コンサルタントなど他の職種で生かしてみたいと考える人が増えるのだろう。

 ITアーキテクトも,全年齢層で現在職種の割合よりも将来希望する割合の方が高い。現在職種がITアーキテクトと答えた割合は,25歳以下で2.9%,26~30歳で4.4%,31~35歳と36~40歳で4.2%.41~45歳で4.3%,46歳以上で3.4%だが,将来ITアーキテクトを希望している割合は,25歳以下で6.0%,26~30歳で11.5%,31~35歳で10.0%,36~40歳で8.9%.41~45歳で6.9%,46歳以上で5.8%と,現在職種の割合よりも高い。とはいえこの数字は,すべての年齢層でコンサルタントやプロジェクトマネジメント,ITスペシャリスト,アプリケーションスペシャリストを希望する割合を下回っており,決して高いとは言えない。

 このほか,全年齢層で現在職種の割合よりも将来希望する割合の方が高い(つまり人気が高い)職種としては,「マーケティング」と「エデュケーション」が挙げられる。逆に,「セールス」,「アプリケーションスペシャリスト」,「カスタマーサービス」,「オペレーション」は,全年齢層で現在職種の割合よりも将来希望する割合の方が低かった。