ソフト開発に携わる開発者/技術者向けサイトITpro Developmentを公開してから,ほぼ3カ月が経過した。こちらの想定以上に多くの方々にアクセスしていただいている。担当者として,まったくうれしい限りだ。ここでは,Developmentサイトへの読者以外からのアプローチについて書いてみたい。

 先日,多数のクライアント(多くはITベンダー)に向けて,Developmentサイトの今年の展望といったものを話す機会があった。割り当てられた時間は15分だったので,開発者であれば誰でも思いつきそうなキーワードをざっと紹介しただけだった。我ながら印象に残らないプレゼンテーションだったと反省した。

 ちょっと驚いたのは,その後の懇親会でのこと。それまで一度も面識がない何人かの方々から声をかけていただいたのだが,その内容がほとんど同じだったのだ。「弊社の技術者がぜひ記事を書きたいと言っている。Developmentサイトで何か協力はできないだろうか」というものだ。

 現在,Developmentサイトで公開している多くの解説記事は,開発の現場で働く開発者/技術者の方々に寄稿していただいたものだ。もちろん弊社の記者が取材して書いた記事やインタビューなどもあるが,その割合はITproの他のサイトに比べればずっと少ない。ソフト開発の専門的な記事は,その道のプロに書いてもらうのが手っ取り早いからだ。

 そのため寄稿の申し出をいただくのはとてもありがたい。しかし,そうした申し出の中には,自社のソフトやツールを紹介したいというものもある。こちらが欲しいのはそうした記事ではない。ソフト開発一般に役立つ記事だ。だから「書いていただくのはうれしいのですが,御社の広告的効果はほとんどありませんよ」と念を押すと,「広告記事を書きたいわけではない」と異口同音に答える。

 話を聞くと,そうした積極的な申し出の背景には,大きく二つの理由があるようだ。一つは,開発者/技術者のスキルアップや自己啓発の一環というもの。通常の開発業務以外に,対外的な職務をこなすことを自らに課している,あるいは会社から課せられているケースが多いと言う。例えば,開発系コミュニティに積極的にかかわる,オープンソースのプロジェクトに参画する,セミナーやイベントの講師を引き受ける,メディアの取材や寄稿に協力する,などがそれに相当する。

 これらは会社の製品や業務に直接関係のないテーマでもよいらしい。人によっては,会社に関係なく,まったくのボランティアでコミュニティやオープンソースのプロジェクトにかかわっていることも多い。また,例えば会社でJavaによる開発を担当していても,趣味でやっているRubyプログラミングを勧める記事を書くのも構わないのだと言う。

 「何をいまさら。そんなことで驚くな」とおしかりを受けそうだが,こちらからではなく,向こうから積極的なアプローチをいくつも受けたりすると,ちょっとびっくりする。日本の開発者も変わったなと思うと同時に,ますます大変になったと思ったりもする。

 さて,開発者が対外活動に積極的なもう一つの理由は,その分野の認知度を高めたい,盛り上げたい,啓蒙したいといった意図によるものだ。自分が惚れ込んでいる,優れていると感じるプログラミング言語,ツール,フレームワーク,技法などをメディアを通して広めたいというわけである(それが前述の自己啓発活動に一致しているケースもある)。

 また,会社によっては,間接的にまたは将来的に自社に利すると考えて,こうした活動を業務として認めている場合もある。例えば,私がつたないプレゼンの中で「今年は組み込み系開発の情報をもっと増やしたいと思う」と言ったところ,何社かの方から「組み込み開発の○○といった記事で協力できる」と具体的な話があった。

 ご存じのように,現在は携帯電話,カーナビ,デジタル家電などを対象とした組み込み系開発の市場が活況で,開発者の求人も増えている。この分野に注力しているITベンダーは,自社の社員がメディアを利用して情報を発信することで,より多くの開発者を引き込めるなら,そうした活動を支援するだろう。記事で自社製品に触れることがなく,すぐに業務に直結しなくても,市場が盛り上がっていくことが大事という判断だ。

 ともあれ,寄稿者にどんな思惑があるにせよ,結果的にDevelopmentサイトに役立つ記事が増えるのなら,筆者としてはウエルカムである。原稿料が安くて,かつ注文がうるさい編集者でも構わないという奇特な方はもっと歓迎である。

 今後,Developmentにどんな新しい記事が公開されるか注目していただきたい。ただし,すでに筆者の編集能力を上回る記事がたまっているので,公開スケジュールをお知らせできないのが残念だが。