インターネットは,世界中にある多数のISPのネットワークを相互接続した,グローバルなIPネットワークです。あるユーザーがインターネットに接続する場合,まずISPに接続します。ユーザーは,そのISPを経由してインターネットの他の部分につなぎ込まれることになります。
一方のNGNはどうでしょうか。現在の加入電話網と同様に,異なる通信事業者のNGNが相互接続し,電話サービスを提供することになります。NGNの場合も,インターネットと同様,グローバルなIPネットワークになりそうです。
通信の内容が大きく異なる
インターネットとNGNのどちらもグローバルなIPネットワークですが,その上で実現する通信の形態は大きく異なります。
インターネットは,IP上で動作するアプリケーションなら,基本的にどんなものでも通信できます。その半面,通信品質を保証しない,いわゆる「ベスト・エフォート」の原理に従います。IPパケットの到達性が確保できればよいので,決まりごとはルーター間での経路情報をやりとりするルーティング・プロトコルだけで十分です。
一方,NGNでは通信事業者が許可したアプリケーションだけが通信できます。さらに,それぞれの通信ごとに通信事業者の管理が及びます。例えば,通信品質をきちんと保証するためにQoSを適用する,ふくそうを生じさせる通話はつながない,といった制御をします。こうした制御に使われるのがSIPです。NGNでは,単にルーティング・プロトコルを使ってIPパケットを転送するだけではなく,その通信ごとに必ずSIPによる制御が関与します。
このように,インターネット上ではIPパケットが自由に流れますが,NGN上では管理された形でしかIPパケットは流れないのです。
NGNとインターネットは併存
インターネットとNGNがまったく別のものだとしても,これらは相互接続することになります。それは,ISPの利用するアクセス回線が,将来はNGNになるからです。NTTは,現在のアクセス網(地域IP網)の機能をNGNに移行させる予定です。こうした流れは,NGNでは一般的になるでしょう。
ISPの契約ユーザーを直接収容するのはNGNを提供する通信事業者になります。そのIPパケットはISPに送られ,そこからインターネットへ流れるのです(図4)。つまり,NGNは,インターネットと直接つながらず,切り離された状態にあります。ユーザーを最終的にインターネットへつなぎ込むのは,ISPの役割というわけです。
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このため,NGNが本格的に立ち上がっても,インターネットは今のままでありつづけるでしょう。
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