NTTグループは2006年12月末にNGNのフィールド・トライアルを始める予定です。これは,2008年ごろに始まる商用サービスに向け,実際に構築したNGNがきちんと動くかどうかを,技術的に確認するためのものです。NGNを利用する企業や一般ユーザーの要望を把握するという目的もあります。
トライアルのスケジュールは,三つの段階で進められます。まず,2006年12月には,NTTが東京と大阪にショールームを用意し,そこに設置した端末向けにサービスを提供します。次に,2007年1月中旬にNTTグループの社宅に端末を設置し,そこにサービスを提供します。そして2007年4月には,一般から募集した1000人程度のモニターにサービスを提供します。
提供するサービスとして,当初はIP電話とIPテレビ電話をNTTが提供します。その後,トライアルに参加したサービス事業者などと協力して,映像配信などのサービスを追加する予定です。
そのためにNTTは2006年7月にインタフェース仕様や接続条件を提示し,他の通信事業者,ISP,サービス事業者,情報家電ベンダーなどに広く参加を呼びかけています。
インタフェースは3種類ある
今回のフィールド・トライアルでNTTが提供するインタフェースは,大きく分けると,「UNI」,「NNI」,「SNI」の3種類になります(図5)。いずれもIPを利用します。IPのバージョンとしては,IPv4とIPv6の両方を利用します。また,通信制御のためのプロトコルにはSIPを使います。
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UNIは,ユーザー端末を収容するためのインタフェースです。具体的には,現在のBフレッツで利用されている「ONU」という光ファイバの終端装置を使います。このONUに,ユーザー宅のブロードバンド(BB)・ルーターをつなぎ,ユーザーのパソコンや電話機はそのルーターに接続します。
UNIでは,IPとSIPに加えて,IPアドレスを割り当てるための「DHCP」,音声通話や映像などのリアルタイム・データを運ぶための「RTP」などが使われます。
NNIは,他のネットワークを接続するインタフェースです。例えば,KDDIといった他の通信事業者のNGNとの接続や,ISPとの接続に使います。
NNIには,いくつかのタイプがあります。まず,他のNGNと対等な立場で接続するためのインタフェースがあります。IPとSIP以外には,ルーティング・プロトコルとして「BGP」と「BGP+」,伝送用プロトコルとして「POS」を利用します。
このほかにも,アクセス回線サービスを提供するためのISP向けのインタフェース,広域イーサネット・サービス,従来の固定電話網や携帯電話網などを接続するためのインタフェースも提供されます。
最後のSNIは,コンテンツ配信サーバーやアプリケーション・サーバーなど,サービスを提供するサーバーを接続するためのインタフェースです。通信制御用のプロトコルにはSIPのみを利用します。
これらのインタフェースの仕様は,基本的にはNGNの標準規格に準拠しています。ただし,標準規格では定義されていないようなところは,NTTが独自に規定しています。
4種類の通信と,対応品質を提供
今回のフィールド・トライアルで提供されるIP通信は4種類あります(表1)。
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一つは,IP電話やIPテレビ電話を想定した双方向のユニキャスト通信です。通信品質(QoS)のクラスは最も高い「最優先」に設定されています。
続いて,VOD型の映像配信を想定した一方向のユニキャスト通信と,リアルタイム放送型の映像配信を想定したマルチキャスト通信が提供されます。これらの通信品質には,2番目に高い「高優先」と品質保証がない「ベスト・エフォート」が利用できます。このほか,具体的な用途が示されていませんが,3番目に品質の高い「優先」というクラスがあります。
最後に,ISPへの接続のための双方向ユニキャスト通信があります。これは,インターネットとの通信に使われるもので,ベスト・エフォートに設定されています。
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