Question 1にも紹介したように,NGNは「通信事業者の次世代IPネットワーク」と一般に説明されています。この説明ではNGNの意味をかなり幅広くとらえることができるので,逆にNGNの実体をイメージするのが難しくなります。

 そこで,さまざまな表層を取り除いてNGNの本質をわかりやすく言い表すと,どうなるでしょうか。そうすると,NGNとは「IPをベースにした新しい加入電話網」ということになります。

 従来の加入電話網では,通話音声をやりとりする際に,発信側と着信側の間に固定的な回線をつなぎます。一度回線をつないでしまえば,安定した品質の通話が実現できます(図2)。

図2●NGNはIPで構築する加入電話網
図2●NGNはIPで構築する加入電話網
NGNは,従来の加入電話網をIPベースに作り変えた次世代の電話網である。 [画像のクリックで拡大表示]

QoSとSIPでIPの電話網を実現

 その一方,IPによる電話網では,すべてのユーザーが共用するネットワークの上で,通話音声をIPパケットにしてバラバラに送ります。このため,NGNのルーターは,IPパケットで運ぶ通話音声の品質を一定に保つ「QoS」というしくみを搭載しています。

 QoSの基本的な考え方は,IPパケットを種類ごとに分類し,ルーターがその種類に応じて転送の順序を変えるというものです。例えば,音声パケットが遅延すると通話品質が低下するので,ルーターは音声パケットを優先的に転送します。IPパケットの分類には,IPヘッダーにある「ToS」という情報などを利用します。

 それ以外に,NGNでは発信側と着信側で通話を接続する(呼設定)ためのしくみを用意しています。従来の電話網では,呼設定の制御信号を伝えるために,通話用とは別の信号回線を用意していました。NGNでは,そのような制御信号も通話音声と同じネットワーク上で,IPパケットを使ってやりとりします。そのプロトコルには「SIP」というものが使われています。通話を制御するための「SIPサーバー」とルーターや端末は,SIPで制御情報をやりとりします。

 ちなみに,NGN向けのSIPは,もともと携帯電話をIP化して固定電話と融合させた「FMC」というネットワーク形態を実現するために開発されました。将来的には,NGNに携帯電話が統合され,FMCが実現するでしょう。

 こうしたNGNのしくみは,実は現在すでに提供されているIP電話のしくみと大きくは違いません。ただし,NGNは加入電話網の役割を果たすので,異なる通信事業者のNGNと相互接続してもきちんと働くようにしなければなりません。このため,NGNでは,相互接続のためのインタフェース仕様を国際的な標準化団体が定めています。

【Answer
NGNは,IPをベースにした次世代の加入電話網です。