「NGN」という言葉が,ネットワーク業界で話題になっています。NGNは「next generation network」の略語で,直訳すると「次世代ネットワーク」ということになります。一般的には,NGNは「IPをベースにした通信事業者の次世代ネットワーク」と説明されています。
NGNは,まだなじみのない用語かもしれませんが,通信業界では最大のトピックの一つと言えるでしょう。なぜNGNが注目を集めるのでしょうか。それは,NGNにさまざまな期待がかけられているからです(図1)。
|
NGNに期待する事業者とベンダー
日本国内では,NTTグループがいち早くNGNの構築を表明しています。2008年に始まるとされる商用サービスへの準備として,2006年12月にフィールド・トライアルを開始する予定です。そのNTTがNGN構築の第一の目的として挙げるのは「既存の加入電話網の置き換え」です。つまり,家庭で使っている電話のつながる先が,将来はNGNになるのです。
この背景には,そもそも従来の電話交換機が製造されなくなったというやむを得ない事情があります。また,それと同時に,インターネットなどで広く使われている汎用のルーターを利用すれば,低いコストで加入電話網のインフラを構築できるという思惑があります。
NGNの主要なアプリケーションは電話サービスですが,固定電話の通話量はどんどん減り続けています。そこで通信事業者は,電話以外のサービスを想定した機能もNGNに用意し,それを利用した新サービスによる新たな収益を期待しています。
一方,ベンダーはNGNを大きな商機としてとらえています。まずNGNを構築するための新たな装置の需要が生まれます。さらに,それらを使ったネットワークの構築作業もあります。このほか,ベンダーはNGNによって生じる新サービス向けの需要にも期待を寄せています。その期待の大きさからか,NGNと直接関係ないようなものまで“NGN”と銘打って売り出すきらいもあります。
ISPからは心配の声も
こうした期待の一方で,NGNに対する心配の声も聞かれます。その声がとくに大きいのはISP,いわゆるプロバイダです。
ISPが一番気にしているのは,通信事業者がこれまで通りきちんとアクセス回線を提供してくれるのかどうかという点です。アクセス回線とは,ユーザーとISPをつなぐ回線のことです。通信事業者は,これまで電話網とは別にアクセス回線網を用意していましたが,NGNではそれらを統合することが一般的になります。この際に,NGNが従来のアクセス回線網と同じように機能するかどうか,ISPは目を光らせています。
|