NGNフィールド・トライアルのショールーム「NOTE」で,主にコンシューマ向けのシステムや端末を展示するのが「NGN for Life」と「NGN for Society」だ()。「NGN for Life」ではテレビや電話といった日常生活で頻繁に利用する端末を,「NGN for Society」では介護やセキュリティ・サービスを支援するシステムなどが展示されている。

表 ショールームで検証されているコンシューマ向けサービス/端末
表 ショールームで検証されているコンシューマ向けサービス/端末[画像のクリックで拡大表示]

IP再送信や携帯との連携も

写真1 ハイビジョン映像配信サービス
写真1 ハイビジョン映像配信サービス

 NGN for LifeでNTTコミュニケーションズ(NTTコム)が展示しているハイビジョン映像配信サービス(写真1)は,H.264に準拠したコーデック装置を使用し,安定したハイビジョン画像と20kHzのステレオ音声を,マルチキャストやビデオ・オンデマンドで配信する。視聴者は,見逃した番組を視聴できたり見たいシーンを選択して視聴できる。一方,コンテンツ配信側にとっては,視聴者の属性に合わせたCMを自動的に挿入することによって,CMの効果を上げられるといったメリットが得られる。

 NTTコムは,ハイビジョン映像配信サービスに加えて1月中に地上デジタル放送のIP再送信も出展する予定。地上デジタル放送をマルチキャスト配信によって,放送と同時に再送信する。

 NTTドコモが出展したワンフォンは,NGNフィールド・トライアルの中で唯一携帯電話とNGNが連携したシステムだ。NEC製のデュアル携帯端末「N902iL」を使い,家庭内ではホーム・ゲートウエイを経由してIP電話として通話できる。企業向けのモバイル・セントレックス・サービス「PASSAGE DUPLE」の家庭版といった位置付けだ。

 また,NTTが展示した高品質IP電話機は,企業向けの「NGN for Business」で展示している高品質IP電話会議装置と同様にUEMCLIP方式を採用。NGNのQoSを活用してアナログ回線の帯域(3.4kHz)の約2倍に相当する7kHzを確保して,従来よりも高い音質で通話できる。

安全を売り物にするサービスに利用

 コンシューマ向けでは,ロボットを使ったコミュニケーション・システムやヘルスケア分野のシステムやサービスも登場した。

写真3 ロボットによる優しい見守り
写真2 介護ヘルスケア

 日立製作所は,「NGN for Society」のコーナーで「情報家電サービス基盤」と呼ぶアプリケーション・プラットフォームをベースにした「ホーム・セキュリティ・コントロール」と「介護ヘルスケア」(写真2)という2種類のシステムを展示している。ホーム・セキュリティ・コントロールは,自宅に監視用のWebカメラと人感センサーなどを設置し,遠隔地にある監視用パソコンで留守中の自宅を監視できる仕組みだ。QoSで「最優先」のトラフィックを設定することで,緊急情報を確実に伝達できる。

 介護ヘルスケアは,血圧や体重,睡眠中の状態など被介護者の健康に関する情報を,介護ヘルパー側に送信。介護ヘルパーは被介護者と離れていても健康状態を確認できる。NGNの発信者IDの識別機能を使えば,個人情報である被介護者の健康情報を「センターとの間で安全に送受信できる。安全性が高い部分に期待している」(日立製作所ネットワーク統括戦略本部放送通信融合事業センタの木下直紀センタ長)。どちらも家庭にゲートウエイ装置を設置。それがサーバーと通信することで実現している。

写真2 介護ヘルスケア
写真3 ロボットによる優しい見守り

 日立は,セキュリティや介護のサービス事業者の活用を視野に入れてシステムを開発しているが,両システムともに商用化についてはまだ検討段階。「フィールド・トライアルを通じて様々な意見をもらいながら考えていきたい」と,木下センタ長は話す。

 NTTとNECが共同開発して出展している「ロボットによる優しい見守り」(写真3)は,親が家庭にいながら幼稚園や保育園に通う子供とコミュニケーションできるシステムだ。親しみやすいデザインのロボット「PaPeRo」の中にはカメラを搭載。親はPaPeRoのカメラで映し出された子供の映像を,パソコンの画面上でリアルタイムに確認したり,PaPeRoにメールを送信して子供に呼びかけたりすることができる。「発番号による回線認証を使うことによって,保護者だけがPaPeRoに接続できる」(金丸直義ヒューマンアプライアンスプロジェクト主幹研究員)と,親以外の第三者が利用できないようにセキュリティ面での配慮もされている。

■変更履歴
記事掲載当初,高品質IP電話機に採用した音声符号化方式を「UMECLIP」と表記していましたが正しくは「UEMCLIP」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/03/17 14:30]