「Windows Vista」に二の足を踏むユーザー企業は少なくない。アプリケーションやデバイスの互換性,OSの品質,セキュリティ,文字セットなど,懸念すべき点は多岐にわたる。マイクロソフト日本法人でクライアント向けWindows事業を統括するジェイ・ジェイミソン氏に,Windows Vistaの導入支援策を聞いた。同氏は「過去最大級の規模で実施する」とした上で,支援策の数々をアピールする。

(聞き手=日経コンピュータ 玉置亮太/小野口哲,写真=中村宏)



Windows Vistaが発売されましたが,導入を控えていたり迷っていたり,あるいは当分の間は導入する必要はないと考えている企業は少なくありません。

 
  マイクロソフト Windows本部 本部長
ジェイ・ジェイミソン氏
 まず申し上げたいのは,Windows Vistaは日本のユーザー企業にとって,非常に質の高い,価値の高い製品である,ということです。日本のユーザー,そして世界中のユーザーを取り巻く環境を見ると,よりセキュリティの高いOS,高度な情報のコントロールが容易なOSが求められています。非常に堅牢なセキュリティが求められる一方で,やはり社員は,業務の生産性の上がる,使いやすいソフトウエアを必要としているのです。

 もう一つ,デスクトップ・パソコンのOSに求められる重要な要素としては,管理コストの低減,すなわちTCO(Total Cost of Ownership)ができるだけ低く抑えられることです。

 Windows Vistaは,こうしたユーザー企業の要件を満たすことができるでしょう。より堅牢なセキュリティを備え,ユーザーの生産性を上げるために役立つ。かつ,TCOの低減にも貢献できる。Vistaでそういった価値を提供できると信じています。

アプリ互換性の情報を徹底公開

 とはいえ,ユーザー企業は,まずは実際にVistaを触って評価し,それから適切な導入計画を立案したいと考えるでしょう。そこでマイクロソフトはパートナー企業と共同で,ユーザー企業の支援策を提供していきます。

 その一つが,12月1日に開設したWebサイト「Windows Vista対応支援センター」です。Vistaの互換性情報を提供したり,互換性をチェックするツールを提供したりしています。こうした総合的な互換性情報サイトを開設したのは,Vistaが初めてです。このサイトでも提供している互換性検証ツールの利用法に関するセミナーを,年末年始にかけて全8カ所で実施中です。これもVistaで初めての取り組みです。

重要な取り組みだと思うのですが,もう少し早く実施すべきだったのでは。企業がOSを導入するには,検証作業に十分な時間をかける必要があります。

 その点については当社も承知しているつもりです。今回のVistaのリリースに当たっては,情報や互換性情報,その他の情報に関しても,比較的早く提供できたのではないかと思っています。これらの取り組みによって,当社が企業向けにVistaを提供する上で,互換性の維持・検証に力を入れていることの一端をご理解いただけるのではないでしょうか。

ただ,日経コンピュータとITproが共同で実施したアンケートでは,アプリケーションの互換性や導入支援,サポートなどに関する情報が不足しているとする不満の声が数多く見られました。

 そういった声があることは,当社も重々理解しております。また,そういうお客様の反応に対して,真剣に受け止めて対応していきたいと思っています。

 ただ,互換性の情報をできるだけ深いレベル,詳しいレベルで提供していかなければいけません。そのためには,Vistaをユーザー企業に提供するISV(独立系ベンダー)と当社との間で,深い情報共有を図る必要があります。

 加えて当社は,アプリケーション開発会社との対話を重要視しています。各アプリケーション・ソフトがVistaでも使えるのかどうか,ユーザー企業に情報を提供するためには必要不可欠な取り組みです。2005年,Vistaがまだ「ベータ1」だった段階から,日本のISVと互換性に関する対話を繰り返してきました。この対話がかなり早い段階からできたということは非常に有意義でした。その結果,先に紹介しましたWindows Vista対応支援センターは,予定より1カ月前倒しで開設できました。

日本には,ユーザー企業が独自に開発したアプリケーションが非常に多いという状況があります。ISVによるパッケージ・ソフトだけでなく,カスタム・アプリケーションの互換性を検証したり保証するために,マイクロソフトとして打つべき手はありますか。

 多くの局面で,ISVの場合と同じ情報やツールを提供することで,カバーすることになるでしょう。例えば,企業内のアプリケーション開発者に対しては,当社が提供している「コンパチビリティー・ツール・キット」を使うことになると思います。MSDNのサイトにアクセスしていただくと,アプリケーションの互換性に関してもっと情報が掲載されています。

企業を意識し検証を重ねてきた