写真1 NTT持ち株会社の和田紀夫社長(右)
写真1 NTT持ち株会社の和田紀夫社長(右)

 NTTが構築を進めるNGNは,まさに社命をかけた一大プロジェクト。フィールド・トライアルを開始した2006年12月20日に開いたオープニング共同記者会見で,NTT持ち株会社の和田紀夫社長(写真1)が「NGNに対する期待の高まりを日々実感している。楽観はしていないが,不退転の決意で取り組んでいく」と熱く語った言葉に,その意気込みが表れている。

 NGNフィールド・トライアルは,2007年度下期の商用サービス開始を前提にして,NGNを利用したサービスやシステム,端末などの技術検証やユーザーの要望を把握するのが主な目的だ。NTTは2006年7月に,NGNと他のネットワークを接続するためのNNI(network-network interface),NGNと端末を接続するためのUNI(user-network interface),NGNとアプリケーション・サーバーを接続するためのSNI(application server-network interface)という3種類の接続インタフェースを公開。情報機器メーカーやサービス・プロバイダ,他の通信事業者などに対してフィールド・トライアル参加を呼びかけてきた。

図 NTTのNGNフィールド・トライアルの計画
図 NTTのNGNフィールド・トライアルの計画
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 NTTは,NGNフィールド・トライアルを約1年間かけて実施する計画だ()。東京・大手町と大阪・梅田に開設したショールーム「NOTE」(NGN Open Trial Exhibition)はその第1弾。ショールームでNGNを利用するサービスやシステム,端末などの技術検証を行うとともに,来場者に対して直にNGNで実現できるサービスやシステムに触れてもらい,NGNのより具体的な姿を示すという狙いがある。ショールームの見学は完全予約制。東京は既に2007年2月中まで予約が埋まっており,大阪も1月中と2月の半分近くの日が定員に達していると関心が高い。

 今年に入ってからはトライアルの対象を順次拡大。1月からはNTTグループ社員に,4月からは首都圏と大阪で最大700人程度の一般モニターを対象にしてNGNフィールド・トライアルを展開していく計画だ。一般モニターは2月16日まで募集し,光ブロードバンド・アクセスや高品質IP電話,地上デジタル放送IP再送信などを利用してもらう。

サード・パーティーの協力が不可欠

 NTTは,NGNフィールド・トライアルのキーワードとして「オープン」と「コラボレーション」を標榜する。NGNは今後の新サービスのインフラになるべきものであり,その成否はサード・パーティーからの協力をいかに得られるかにかかっていると言っても過言ではない。インタフェースをトライアル開始より約5カ月前に公開したのもそのためだ。

 NTTの呼びかけに応じて,トライアル開始当初はNEC,NECビッグローブ,NTTコミュニケーションズ,NTTドコモ,朝日ネット,シスコシステムズ,ソニー,ソネットエンタテインメント,ニフティ,日立製作所,ぷららネットワークス,松下電器産業の12社が参加企業として名を連ねた。参加企業の幹部たちは,NGNフィールド・トライアルへの期待や意気込みを次のようにコメントしている。

シスコシステムズの黒澤保樹社長
「今回のフィールド・トライアルは,ユーザーに新しいサービスやアプリケーションを体験してもらうことはもちろん,シスコにとっても多くの新しいことを学ぶまたとないチャンスだ。ネットワーク・プラットフォーム,サービスの制御と管理,コミュニケーションとコラボレーションのアプリケーションの3分野について,トライアルで学んだことを基に商品の改良を重ねて世界の商品にしていきたい」

NECの広崎膨太郎執行役員専務
「NGNによって,個人と個人,企業と企業の間の新しい形のコラボレーションの場が形成され,これまでには考えられなかったビジネスチャンスが生まれることを期待している。フィールド・トライアルの経験を踏まえてNTTと一緒に海外に日本発のイノベーションを積極的に展開したい」

写真2 シスコシステムズの黒澤保樹社長   写真3 NECの広崎膨太郎執行役員専務
写真2 シスコシステムズの黒澤保樹社長   写真3 NECの広崎膨太郎執行役員専務

日立製作所の竹村哲夫情報・通信グループCOO
「NGNはユビキタス情報社会を支える柱になり,ビジネスや家庭,社会のサービス,システムに広く影響すると確信している。フィールド・トライアルでは,安心・安全をテーマに住みやすい家や介護の分野に絞って実証実験をする。トライアルを通じて実際のサービス,システムにつなげていきたい」

松下電器産業の津賀一宏役員
「幅広い家電商品群でネットワークを利用するためには,インフラの進化が必要だ。NGNが標榜するセキュリティや品質保証といった特徴は,家電のネットワーク化には不可欠な要素。今回,NTTを中核にさまざまな事業者との連携を通じて,新しい変化を家電メーカーとして起こすことに貢献したい」

写真4 日立製作所の竹村哲夫情報・通信グループCOO   写真5 松下電器産業の津賀一宏役員
写真4 日立製作所の竹村哲夫情報・通信グループCOO   写真5 松下電器産業の津賀一宏役員

 NTT,そして参加企業のそれぞれが大きな理想を思い描く中で,NGNフィールド・トライアルはスタートした。