激変する経営環境、進化する技術への対応、事業継続性の確保…。このような中で新しいビジネスを支える情報システムの構築・運用には、顧客とITベンダーとの適切な役割分担が重要になる。そこで、富士通FIPはITインフラから企画・開発・運用まで各種アウトソーシングをワンストップで提供する体制を整えた。これらの実績をベースにした各種BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスも提供する。

3つの事業分野とBPOへの取り組み

太田幸一氏

 「当社は『アウトソーシング』『Webサービス』『システム・インテグレーション(SI)』の3事業を融合したLCM(ライフサイクルマネジメント)サービスを提供しています」。富士通エフ・アイ・ピー(FIP)の太田幸一社長は、同社の特徴をこう説明する。

 とくに拡大するアウトソーシング市場で、富士通グループはトップシェアを確保(IDC Japan、2006年8月調査で24%)。その中核を担う富士通FIPのアウトソーシング事業は最適なシステムリソース、多彩なネットワークなどインフラ機能とその運用、システム計画立案からアプリケーション開発、運用マネジメントまでをワンストップで提供している。サーバーの台数も8000台を超える勢いだ。

 富士通FIPは、アウトソーシングの拡大版ともいえる顧客の業務まで請け負うBPOサービスにも力を注ぐ。目下のところコンタクトセンター、エントリサービス、プリンティングサービス、トランクルームサービス、デリバリサービスなどのB P Oのサービス・メニューを用意。「BPOは早い時期から取り組み始めたことで、顧客数はすでに延べ673社に及ぶ。ITや各業種・業務の運用ノウハウをベースに、業務プロセスを最適化するとともに、業務の運用を代行しています」(太田社長)。

 VAN(付加価値通信網)の時代から継続しているWebサービスも充実させている。流通や製造を中心とした企業間取引を支援するEC(電子商取引)/EDI(電子データ交換)系サービス、グループウエアや業種・業務アプリケーションを、ネットワークを介して提供するASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)サービスなど、信頼性の高いネットワーク・ソリューションを揃えている。SIでは公共や医療・福祉、金融、製造、流通、環境、土木などの業種・業務ノウハウに、ハードとソフトを組み合わせて提供している。

●富士通FIPの事業分野
●富士通FIPの事業分野
富士通グループの最新テクノロジーソリューションをベースにアウトソーシング、Webサービス、システム・インテグレーションを提供
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ビジネスパートナーへの「守り」の提供

 「当社は顧客とともに成長するビジネスパートナーとなることを目指すために、『守り』のサービス、『攻め』のサービスの両面で顧客をサポートしています」と、太田社長はサービス事業内容を説く。

 ここでの「守り」のサービスとは、災害対策や最新技術の活用、ディザスタリカバリサービス、ワンストップセキュリティ、内部統制/日本版SOX法(企業改革法)対策などになる。この中で災害対策のベースとなるのが、高いセキュリティ環境を備えた全国14カ所のデータセンターだ。これらセンターは、各種ファシリティや監視/オペレーション、ヘルプデスク、生体認証など最新のセキュリティ技術も活用している。

 14カ所のデータセンターの連携で実現させたディザスタリカバリサービスは、ディスクのミラー化によるデータ同期のサービスも提供する。セキュリティ対策は「セキュリティマネジメント」「サーバーアタック攻撃」「クライアントPCセキュリティ対策」「情報漏洩対策」の4つのカテゴリーに体系化し、企画からシステム構築・運用、アウトソーシングまで提供。内部統制/日本版SOX法対策では文書化や不備改善、評価・監査までを支援する。

ビジネスパートナーへの「攻め」の提供

 一方、「攻め」のサービスは顧客企業の成長や価値の創出を実現させるもので、「顧客へのサービス向上、マーケット拡大の場の提供、新ビジネスの場の提供、企画業務のさらなる集中などが挙げられる」(太田社長)。これらについては、導入事例を元に紹介がなされた。

 赤ちゃん本舗へのギフトBPOを例に、太田社長は「顧客へのサービス向上」を説明する。赤ちゃん本舗は年間180万件に及ぶギフト販売があり、それに伴う申込用紙のデータ入力、宅配便の伝票作成などが店員の大きな負荷となっていた。そこで、富士通FIPはこの一連のプロセスのシステム化と業務を代行し、ミスの削減や確実な商品到着管理などを実現させた。

 「マーケット拡大の場の提供」では、富士通九州システムエンジニアリングの顧客への運用支援がある。同社は顧客企業の情報システムを構築、稼働させた後の運用サポートを、富士通FIPに委託することで、地元にいながら全国の顧客に高技術のサービスを提供できるようになった。

 「新ビジネスの場の提供」では、凸版印刷とのコラボレーションによるギフトカード事業がある。プリペイドスタイルのプラスチックカード型ギフト券であるギフトカードは、新タイプのプレゼントや電子マネーとして注目を集めている。富士通FIPはギフトカードの導入からシステムの構築・運用、プロモーションまでをワンストップで提供している。

 「企画業務のさらなる集中」では、高島屋への導入事例が紹介された。高島屋のIT推進室はシステム業務のコアとなるシステム企画に専念し、それ以外の業務分析、設計、さらにインフラ提供、定常業務運用・監視、ヘルプデスクまでを富士通FIPにアウトソーシングした。これにより、高島屋は20%以上化、企画業務へのパワーシフトを実現させたという。

 このように富士通FIPはアウトソーシングの範囲を、IT運用からアプリケーション運用、業務運用と拡大させている。その狙いは、顧客満足度を高めたり、企業価値を創出したりするビジネスパートナーへと展開し、顧客への最大価値提供にある。