ミニストップの店舗
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 ミニストップは2006年12月から、約1800店あるコンビニエンスストアの個店単位のPOS(販売時点情報管理)データや在庫数、さらには物流センターの在庫数などをインターネットを通じて取引先に開示し始めた。そのための「SCM(サプライチェーン・マネジメント)システム」を数千万円かけて構築している。2007年1月中には約20社の取引先と運用を始め、翌2月にも約100社のメーカーや卸まで広げていく。

 この取り組みの大きな狙いは、店舗の生の情報を公開することで、メーカーの協力を取り付けることだ。そして、売り場のカテゴリーマネジメントを推進する。POSデータや陳列数を参照しながら、メーカーと一緒になって商品カテゴリーごとの品ぞろえを見直し、そのカテゴリーの売り上げや利益を最大化する。

 注目すべき特徴は、食品や飲料、日用品といった商品カテゴリーごとのPOSデータを、関係メーカーには競合商品の分まで含めてすべて開示することだ。メーカーは自社商品だけでなく、棚の隣りに並ぶライバル商品の売れ行きまで実績値を確認できる。ここまで踏み込んだ情報開示はコンビニ業界では珍しい。

 同様のシステムを2004年4月から運用するファミリーマートも、そこまでは踏み込んでいない。商品本部商品業務部の齊藤貴久マネージャーは「棚全体の情報をメーカーと共有できなければ、カテゴリーマネジメントはできない」として開示を決めた。ミニストップと取り組みを始めたメーカーからは既に、「ここまで詳細なPOSデータを開示する小売りチェーンはあまりなく、様々な活用が考えられる」との声が寄せられているという。

 コンビニ各社は1店舗当たりの販売高が伸び悩んでいるが、業界内で店舗網が小さいミニストップは、「情報開示の面ではほかのチェーンとの違いを出し、メーカーとの結び付きを強めたい」(齊藤マネージャー)と考えた。システム開発に先立ち、1年前からメーカーを数十社訪問し、「どんな情報が必要なのか」とヒアリングした。すると、一番の要望は「競合他社の売れ行きを知りたい」というものだった。

関係メーカー全員の知恵を集結

 そこでミニストップはカテゴリー単位ですべてのPOSデータを開示することを決断した。そして各社にその旨を伝えた。なかには自社商品の売れ行きを競合他社に知られることを嫌がるメーカーもあったが、「顧客の視点に立てば、棚を構成するメーカーや卸、そして当社が全員で情報を共有・分析し、知恵を出し合うことが先決と判断した」。

 POSデータを受け取ったメーカーには独自の分析力でカテゴリーマネジメントに取り組んでもらい、「商談では売り場の改善案を提案してもらいたい」という。