少子高齢化、ニーズの多様化、競争激化…。コンビニエンスストア業界は成熟期を迎え、ビジネスモデルの変革が迫られている。この変革を支援するのがITであり、ローソンではSimple、Small、Speedをキーワードに展開。また、ITの重要度が高まるにつれITガバナンスの強化も推進している。ユーザー企業として、ローソンのITへのとらえ方や取り組みが紹介された。

Simple、Small、SpeedをキーワードにITを再構築

長谷川 進氏

 「当社は極めてIT依存度の高い企業であり、そのITもビジネス変革のため、再構築が求められています」と、ローソンの長谷川進常務執行役員は語る。

 ローソンの店舗数は国内8400店強、1店舗当たり毎日約800人の顧客が訪れ、3品程度を購入する。これで日々、約2000万件のトランザクションが発生し、データセンターで集計される。ほとんどの従業員はコンピュータからの指示に従って作業を遂行し、自ら考えたり判断したりすることは狭い範囲に留められている。

 一方、右肩上がりで成長してきたコンビニ業界も、従来のやり方が限界となっている。現在の中心顧客層の7割強が20~30代の男性で占められており、日本の人口動態とは明らかに異なる。そのため、地域や客層に合わせた店舗作りが迫られている。現状の提供サービスに加え、金融、クリーニング・宅配などのサービス提供も求められている。

 こうしたビジネス変革を支援するため、ITの再構築が必須となっており、そのキーワードが「Simple」「Small」「Speed」だ。「Simple」は誰でも操作できるITシステムであること。「Small」は店舗ごとの顧客ニーズに合わせて、商品やサービスを変化できること。「Speed」は仮説から検証へスピードアップして、リアルタイムで需要を把握できることである。

ITガバナンスの強化
半年以内に新システムを稼働

 「ビジネス変革の動きは着実に成果を上げています。例えば全国を7ブロックに分け、好みの唐揚げの味付けを投票する『からあげクン選挙』を行い、地域の味付けで販売しています。個々のニーズに対応した新商品が、続々と誕生しているのです」(長谷川常務)。

 ローソンが実現しようとしているITによるビジネス変革。これにつれITの重要性が高まり、その計画や管理強化も不可欠となっていく。ITガバナンスの強化が求められているのである。ITガバナンス強化の一環としてローソンの実施しているのが「ROI管理」「リスク・コンプライアンス」「BPRの推進」だ。

 「ROI管理」ではIT化の可否判断と効果検証を意識したPDCAサイクルの確立。「リスク・コンプライアンス」では会計監査・内部監査以外に、第三者による自主監査と取引先に対する監査を実施し、社内と取引先、それぞれ約100項目をチェックし、改善を求める。「BPRの推進」ではIT部門のミッションを「ITを活用した新サービスを創造できる部門」とし、社内コンサルが可能な人材育成を推し進めている。

 以上を徹底するため、新システムも半年以内で稼働するようにしている。「各事業部門のトップは1年契約ですから、1年以上もシステム構築にかけていては効果を確認できません。満点を目指さず、70点レベルで稼働させ、強化させていくようにしています」と、長谷川常務は最後に語った。