ワシントン大学の研究グループが「Nike+iPod Sport Kit」を利用し,人物の行動を自動的に追跡する監視システムをデモンストレーションした。Nike+iPod Sport Kitは,スニーカー内に張り付ける送信機と「iPod」に取り付ける受信機で構成される。このキットにより,移動の時間,距離,速度,消費カロリーを記録できる。

 ところがスニーカーの送信機の出す電波は,最大60フィート(約18メートル)離れたところから受信できる。さらに送信機は固有のIDを発信するので,ユーザーの追跡が可能となる。研究グループは追跡装置(コストは250ドルほど)を組み立てて「Google Maps」に接続し,デモンストレーションを行った。

 このデモンストレーションは,無線ICタグ(RFID)が尾行に利用できると疑う人々にとって,強力な実例となる。送信用ICに個人を特定する情報が記録されていなくても,ICに固有のIDが割り当てられている限り,IDを監視することでユーザーを追跡できる。

 この例の本質は,簡単に追跡できる点にあると見ている。Nike+iPod Sport Kitのシステムを開発したグループは,セキュリティとプライバシーの問題など全く考えなかった。この種のシステムでセキュリティを確保するよう企業に求める包括的な法律を作らなければ,今後も様々な企業が新しい技術でプライバシー侵害を可能にする装置を提供し続ける。それは,故意でも悪意があるからでもない。単に,思わぬ影響を考慮するよりも無視する方が簡単だからだ。


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◆オリジナル記事「Tracking People by their Sneakers」
「CRYPTO-GRAM December 15, 2006」
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◆Bruce Schneier氏は米Counterpane Internet Securityの創業者およびCTO(最高技術責任者)です。Counterpane Internet Securityはセキュリティ監視の専業ベンダーであり,国内ではインテックと提携し,監視サービス「EINS/MSS+」を提供しています。