文・岡野 高広(日立総合計画研究所社会システム・イノベーショングループ 研究員)

 BPO(Business Process Outsourcing)とは、企業などが自社の業務の一部を外部の専門業者に企画・設計・運営まで一括して委託することです。

 従来のアウトソーシングとの大きな違いは、業務の委託範囲です。例えば、情報システムのアウトソーシングでは、システム・インテグレーターやベンダーなどがシステム構築と運用・保守を行うという形が主流です。一方BPOでは、企画立案の段階から当該業務システムだけでなく業務そのものを含めて丸ごと外部企業に委託します。導入効果としては、より低い業務コストで従来よりも高い品質のサービスを調達できることが挙げられます。

 BPOはこれまで民間企業が中心となって導入してきましたが、最近では自治体でも導入事例が増えてきています。背景には、財政難や専門人材の不足があります。多くの自治体にとって、財政再建と行政改革は緊急の課題であるのに加えて、政府が解決策の一つとして民間委託や競争原理の導入を推進していることも、BPO導入を後押ししています。

 例えば、2005年3月に総務省は、「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針(地方行革指針)」を発表し、地方自治体に対して民間委託の推進を促しました。その後、2006年5月に成立した「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律(行政改革推進法)」および「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律(市場化テスト法)」により、地方自治体が民間に業務委託できる範囲を拡大しました。

 BPOを導入している自治体としては、大阪府が2004年度から、総務関係業務の一部と情報システムを一括して松下電器産業、富士通、NTT西日本による企業連合に委託しています。「大阪府IT推進プラン実施レポート」では、業務改革とIT化により、約400人の担当職員を市民サービスにより近い部門や中核業務に配置することができたと報告されています。また佐賀県では、2007年度から警察などの特殊業務を除く2027の業務に関して、業務の民間委託や官民協働事業化を視野に入れた「協働化テスト」を実施しています。

 BPOを導入する具体的なメリットとしては、(1)コスト削減、(2)質の高いサービスの享受、(3)中核業務への集中、(4)雇用リスクの回避、(5)業務処理費用の従量化、があります。

■表 BPOの導入メリット
メリット 内容
コストの削減 高度な運用ノウハウや既存設備を持つ民間業者に委託することによるコスト削減
質の高いサービスの享受 外部の運用ノウハウや経験の活用により、質の高いサービスを享受することが可能
中核業務への集中 本来強化すべき中核業務に経営資源を集中
雇用リスクの回避 雇用リスクを回避し、柔軟な人員配置が可能
業務処理費用の従量化 業務処理費用を従量化し、業務量の増減への対応が容易に
出典:日立総合研究所

 行政部門でBPOを導入する際の注意点として、主に三つのポイントが挙げられます。まず、第一に、何が中核業務なのか、どの業務ならばBPOの対象になり得るのか、という業務の切り分けです。組織・部門ごとに異なる中核業務を見極めるには、委託元が業務の相互連携関係を正確に理解している必要があります。

 第二に、事前に委託元と受託業者間で、業績評価指標(KPI)を用いたサービスレベルアグリーメント(SLA)を締結することです。サービスは製品に比べて内容が分かりにくく、委託元と受託業者間で期待するサービスレベルに関して見解の相違が生じる可能性があります。そのため、サービスレベルを事前に数値化することで、互いの役割と責任を定めておく必要があります。

 第三に、個人情報の取り扱いがあります。特に行政部門の業務は個人情報を取り扱うものが非常に多いため、契約時に受託業者が確実に機密を保持できることを確認する、罰則規定を設ける、などの厳格かつ適切な対処を行う必要があります。