アクセス解析

 ウェブサイトの黎明期は、とにかくホームページを開設して情報発信をおこなうことのみに注力される場合が多かった。

 発信された情報に対しての問い合わせも既存メディアと違い、世界中から簡単にe-メールで寄せられるのだが、当初はこのようなことを想定していなかったのか対応する体制もなく、はなはだしい場合は問い合わせを拒否する企業も多く見受けられた。

 最近ではCRM(Customer Relationship Management)の観点からこのようなケースは減少しているが、その原因はウェブサイトを古来の一方通行的なメディアと同等にしか捉えていなかったからだろう。

 ウェブサイトはネットワーク上に存在しその性格上アクセスしてきた顧客の足跡つまり行動軌跡がある程度トレースできる。これは、テレビの視聴率調査などで特殊な機械を受像機側に設置して解析するのに比較すると、その内容と質は別として基本的な情報がウェブサイト側に蓄積されているという大きな財産でもある。

 顧客の行動をリアルタイムで把握できるということは、あらゆる分野への無限の可能性を秘めている。これらのデータを活かすも殺すもサイトオーナーの考え方次第ということになる。最近では、これらの分析をサービスする会社も多数存在しており、利用しやすいASP(Application Service Provider)として提供されている場合が多い。目的に応じて検討されるとよいだろう。

ウェブサイトはセンサーでもある

 ウェブサイトは情報発信する機能は分かりやすいためクローズアップされることが多いが、逆にすぐれたセンサーとして紹介されることは意外と少ない。

 サイトの表現や内容に対して顧客がどのように接してきたか、どのようにしてここまできて、その後どこへ行ったのか、インデックスの表現やデザインを変えるとどのようなことが起こったか、来場者に対していくらくらいの売り上げになったか、他メディアとの連動した販促効果‥‥などなど、考えれば考えるほどその解析目的は多岐に及んでいく。更には、自社、他社等複数の関連するサイトと協調すれば今まで見えなかった世界が見えてくる。まさしく電波望遠鏡を複数持って未知の宇宙の姿を探求する世界とオーバーラップしてくる。

 まず、事実を把握することが重要である。そこからすべてが始まる。一方的な考え方や推論でシステム構築やコンテンツを制作し、デザインすることほど無駄で非効率な投資はないし、時間の無駄でもある。

正しくフィードバック

 設定した目的毎に入手した情報は、精査され、つぎのアクションへの貴重なデータとなる。例えば経営判断のレイヤーでは、最近の欧米を拠点とする企業やグローバルに展開する企業では、これらの情報を企業経営の重要な指標としているケースが多く、大きな成果を出し始めている。

 本講座の1回目でも述べさせていただいたが、顧客の消費行動に対するウェブサイトの影響力が非常に大きくなり、従来メディアとは比べ物にならない程のパワーを持った事に起因して、ウェブサイトからの各種解析結果が企業経営判断の重要な要素、KPI(Key Performance Indicator)として認識されているからである。

 先端を走り好業績を出している企業のトップは、これらウェブサイト群をセンサーとした各種解析データを自ら読み判断しているはずである。そうでなければ、そのような状況に遅かれ早かれ変化していくだろう。

 また、ウェブサイト自体へのフィードバックももちろん有効に作用する。インデックスの位置や表現を変更したり、デザイン自体の見直し、ナビゲーションの考え方の変更などあらゆる領域への改善策として反映されるはずである。また、検索エンジンへの最適化(SEO)に関しても何らかの好影響が期待される。

 このように上位経営判断から顧客とのダイレクトタッチポイントまですべての領域に対して、事実に基づいた正確な情報により、適切な判断と適切な対策が実現する。

戦略的改善

 判断された結果、そこから新たなVOICEが出る事になり、VOICEに対する解析が始まる。そしてこのサイクルが再び同じように回り出す。このサイクルを何回も継続的に続けることによりウェブサイトの最適化も進み、結果、業績にも好影響を与えるかもしくは直接の売り上げに貢献することになる。

 ポイントはウェブサイトを重要な経営戦略ツールとして捉え、いかに活用するかである。

 米国のとある企業では、本社中枢部にこれらWeb戦略チーム(十数名)を置き、グローバルにディレクションを出している例もあり、同様のケースが広がりつつある。