ピッキング作業ではまず、自動車メーカーの発注データを記載した「順立て指示書」を紙に印刷して、指示書に記載されたQRコードをピッキング用のハンディ型リーダーで読む。これにより、「出荷パレットに次に入れる部品を、どの入荷用パレットから取り出せばよいか」が、入荷用パレットの上に設置されたランプの点灯で示される。作業者は、ランプで示された入荷用パレットから部品を取り出し、リストバンド型のリーダー/ライター(写真3)を使って、入荷用パレットのICタグを読む。このとき間違った部品を取り出すと、リストバンド型リーダー/ライターが振動して警告音が鳴る(写真4)。警告音が鳴らなければ、部品を出荷用パレットに移し、出荷用パレットのICタグを読み、それで一つの作業が完了する。これをランプが消えるまで繰り返す。ランプの点灯順に従って部品をピッキングする方法を採用したのは、「熟練者でなくても、間違いなく作業できるようにするため」(ロジックス豊田パーツセンター長の中根康秀氏)である。

写真3 ピッキング作業用のリストバンド型リーダー/ライター


写真4 ピッキング時にリストバンド型リーダー/ライターで入荷用パレットのICタグを読んでいるところ

 ピッキング用のハンディ型QRコードリーダーとリストバンド型のICタグリーダー/ライターは、ウェルキャットが供給した。自動車のボディ部品は大型の製品が多く、ピッキングの作業者が両手を使うことがほとんどである。そのため通常のハンディ型リーダー/ライターを使うと、作業性が悪くなる。「作業者が両手を自由に使えるように、リストバンド型のリーダー/ライターを採用した」(ロジックス豊田パーツセンター係長の武田健次氏)という。リストバンド型リーダー/ライターで読んだICタグのデータは、短距離無線通信方式の「Bluetooth」によってハンディ型リーダーに送られ、無線LAN(「IEEE802.11b」規格に準拠)を介してデータベースに送られる。

初期投資は約2年で回収、システムを外販へ

 ピッキングが終わると指示書を出荷用パレットに張り付け、指示書のQRコードを入荷検品用と同じリーダー/ライターで読み、組み立て工場に出荷される。200枚使用しているICタグは回収し、カンバンの背番号を書き直して再利用している。こうしたシステムを本格稼働させた2006年3月から豊田パーツセンターでは、ボディ部品の誤配送がゼロになった。翌4月からは出荷前の最終チェック要員2人をなくしたが、「それでも誤配送のゼロは続いている」(センター長の中根氏)という。

 ロジックスは今回のシステムの導入費について、最終チェック要員2人分の人件費を約2年で回収できる金額としている。ただし同社会長の大見氏は、「初期投資を何年で回収できるかという問題よりも、誤配送をゼロにできたことの方が重要だ」という。順立て納入に対応しながら、誤配送をゼロにできないで苦戦している部品メーカーは多い。ロジックスは新たな事業としてこうしたメーカーに、今回のシステムの外販を計画している。



本記事は日経RFIDテクノロジ2006年9月号の記事を基に再編集したものです。コメントを掲載している方の所属や肩書きは掲載当時のものです