将来、奥井さんのようなコンサルタントを目指しています。どうしたらなれるのでしょうか。コンサルタントになるための近道を教えてください。
(コンピュータ・メーカー、営業/女性・32歳)

A: ITコンサルと経営コンサルで求められる資質は異なる

 コンサルタントと一口に言っても,ITコンサルタントと経営コンサルタントは全く異なる領域です。

 ITコンサルタントになりたいのなら,手っ取り早いのはITコンサルティング会社に転職することです。この際,IT関連の公的資格を取得すると有利です。ただし,経験の少ない若手が一人前のITコンサルタントになるには,転職後にそれなりの努力が必要であることは覚悟してください。

 ITコンサルタントは,十分なスキルと経験を基に,クライアントの情報化を正しくリードする仕事。ITとビジネス両面について深い知識が必要です。

 最近は,ERPを導入するだけでコンサルタント料金を取るようなケースがあるようですが,私はそれをITコンサルティングとは認めません。

 さて,経営コンサルタントですが,こちらは公的資格はほとんど関係ありません。MBAにしても,有効なのはせいぜい,世界ランクでトップ10に入る大学で取得した場合でしょう。

 経営コンサルタントには,知識の豊富さもさることながら,「頭の切れ」が求められます。「頭が切れる」とは,1つの物事を様々な角度でとらえ,ユニークな視点で語れることです。私が経営コンサルティング会社に採用されたのも多分,「こいつは何か面白いヤツだ」と思われたからでしょう。

 ユニークなものの見方を養うには,日ごろの訓練が必要です。私の場合,毎日メモを持ち歩いて,新しいアイデアや視点を記録しました。人とは違う視点をものにするまでに,最低でも1年は必要です。

 いずれにせよ,コンサルタントになるにはそれ相応の努力が必要です。どんな職業にも言えることだと思いますが,プロフェッショナルになるのに近道はないのです。

奥井 規晶(おくい のりあき)
1959年神奈川県出身。84年に早稲田大学理工学部大学院修士課程修了。日本IBMでSEとして活躍後,ボストン コンサルティング グループに入社。戦略系コンサルタントとして事業/情報戦略,システム再構築,SCMなどのプロジェクトを多数経験。その後,アーサー・D・リトル(ジャパン)のディレクターおよび関連会社のシー・クエンシャル代表取締役を経て,2001年にベリングポイント(元KPMGコンサルティング)代表取締役に就任。2004年4月に独立。現在,インターフュージョンコンサルティング代表取締役会長。経済同友会会員,日本キューバ・シガー教育協会専務理事。